2021年のF1世界選手権。
管理人はDAZNを契約してもF1しか観ませんが、月額1,925円(Apple ID経由で1,900円)が全く高いと感じられないほど、それほど楽しめたシーズンでした。
特に最終戦のアブダビGPはその集大成ともいえる劇的なレースであったといえます。
いったい何が劇的でどのようにすごかったのか。
今回は2021年最終戦アブダビGPに関する出来事を時系列に沿っておさらいしていきたいと思います。
画像引用元:壁紙 | Honda Racing 日本GP 特別展 | Honda
※ドライバー名は敬称略とさせていただきます。
最終戦を迎えるまでの“あらすじ”がすごい
まず最初に触れておきたいのが、2021年はドライバーズタイトル争いが最終戦までもつれ込む大接戦であったということ。
これまでミハエル・シューマッハと並び歴代最多の7回のワールドチャンピオンに輝いているルイス・ハミルトンと、レッドブルホンダで初のワールドチャンピオン獲得に王手をかけたマックス・フェルスタッペンの一騎打ち。
しかも優勝争いをする2人のドライバーの点差は0ポイント。
21戦を戦い、なんと同点で最終戦を迎えることとなったのです。
これは70年を超えるF1の歴史において、47年ぶりにしてわずか2回目の出来事。
両者369.5ポイント。
2021年は第12戦のベルギーGPが雨によるレース終了でレース総距離の75%を満たさなかったため、ハーフポイントの付与による小数点以下の点数が導入されましたが、その小数点以下までピッタリと同じです。
加えて言えば、47年前の1974年は全15戦に対し、2021年は全22戦もあったわけで、まさに史上稀に見る大接戦であったと言えます。
ただし、もし最終戦を両者同点のまま終えた場合、ワールドチャンピオンに輝くのは優勝回数の多いフェルスタッペンとなります(これが最後までハミルトンを苦しめることになるんですよね・・・)。
もう一つお伝えしておきたいのが、2021年はホンダにとってラストチャンスであったということ。
2021年のシーズンが開幕する前、正確には2020年10月2日。
パワーユニットサプライヤーとして参戦していたホンダは、F1からの撤退を発表しました。
2015年のF1復帰から7年目、撤退を決めた最後の最後のシーズンに、そのチャンスをつかむことができるのか。
もしフェルスタッペンが優勝すれば、ホンダにとってはまさに有終の美。
しかも、あのアイルトン・セナが優勝した1991年以来、30年ぶりにドライバーズタイトルを獲得することになります。
一方でメルセデスのハミルトンは歴代単独最多の8回目のワールドチャンピオンに王手がかかった状態。
果たしてその結末は・・・。
スタート -フェルスタッペンの焦り-
画像引用元:Wallpapers by Mercedes-AMG Petronas Motorsport
優勝争いをするフェルスタッペンとハミルトンは共にフロントロー(最前列)。
フェルスタッペンは予選Q3でチームメイトのセルジオ・ペレスのトウ(スリップストリーム)を借り、見事ポールポジションを獲得します。
しかし、予選Q2においてミディアムタイヤにフラットスポットを作ってしまい、ソフトタイヤでのスタートを余儀なくされていました。
一方のハミルトンは予選2番手となりましたが、スタートのタイヤにミディアムタイヤをチョイスすることに成功します。
こうなると、フェルスタッペンはポールポジションからスタートダッシュを決め、ソフトタイヤのメリットを活かして差を広げる“先行逃げ切り“を狙うのがベター。
ところが、フェルスタッペンは緊張のせいかスタートに失敗してしまいます。
反応は遅れ、ホイールスピンをしながら鈍く加速するフェルスタッペンのマシン。
あっという間にハミルトンに先行を許してしまいます。
焦ったフェルスタッペンはターン6で強引にオーバーテイクをしかけ、あわや接触。
もしここで接触して仮に両者リタイヤとなれば、優勝回数で勝るフェルスタッペンの優勝が確定することに。
ハミルトンは絶対にぶつかることができません。
コース外に逃げる形で接触をかわし、続くターン7をショートカットするかたちで先頭でコースに復帰します。
仮にここまでの優勝回数でハミルトンが勝っていれば、賛否は別として、ハミルトンは接触を受け入れ、両者リタイヤとなることでワールドチャンピオンを獲得することが可能でした。
ハミルトンがコース外に逃げなければ接触していたようなシチュエーションでしたから、この可能性は十分にあったと言えます。
しかし、ハミルトンは接触を避けるしかありませんでした。
邪推ですが、フェルスタッペンはそのことをよく理解していて、多少強引なオーバーテイクをしかけたのかも・・・。
これはここまで全くの同点でありながらも優勝回数で勝ったフェルスタッペンが持つ、唯一にして最大のアドバンテージであったと言えます。
逆に、この「絶対に接触できない」という現実は、最後の最後までハミルトンを苦しめることとなります。
とはいえ、接触を避けたハミルトンは以前トップを走行。
ショートカットについても、メルセデスはこれにより稼いだアドバンテージ分をアクセルオフで清算したと主張し、不問となりました。
さて、ハミルトンに先行を許したとはいえ、ソフトタイヤを履くフェルスタッペン。
普通に考えればフェルスタッペンの方がペースが良さそうですが、なんと実際はハミルトンについていくことができません。
驚異的な速さでリードを広げ始めるハミルトン。
予選では完全勝利に見えたレッドブルホンダでしたが、レースペースではメルセデスにまるで歯が立ちません。
“レジェンド” ペレスの大健闘
画像引用元:壁紙 | Honda Racing 日本GP 特別展 | Honda
14週目、すでに5秒以上の差をつけられたフェルスタッペンは最初のピットイン。
ハードタイヤに交換してコースに復帰します。
これを見て、先行するハミルトンも翌周にピットインをしてハードタイヤに交換。
もともとミディアムタイヤで走っていたハミルトンにはまだ余裕があったはずですが、これはベターな戦略。
後続と同じタイミングで同じタイヤ戦略を取れば、ここまでに稼いだアドバンテージを維持したままタイヤは同じ条件となり、無理せず逃げ切ることが可能というわけです。
いわば5秒以上の差がついた状態でリスタートを切ったようなもの。
ここでレッドブルホンダは次の作戦を実行します。
その作戦とは、チームメイトのペレスのピットインを見送り、追いついてきたハミルトンをコース上で抑えさせるというもの。
ソフトタイヤでコースに留まり続けたペレスにハミルトンが追いついたとき、ハミルトンとフェルスタッペンの差は約8秒。
そして、ペレスとハミルトンのラップタイムには約3秒もの差がありました。
果たしてどれだけ抑えることができるのか・・・。
20週目、ついにハミルトンがペレスに追いつきます。
ターン7の立ち上がりで勝るハミルトンが前に出て、呆気なく勝負が決まった・・・かのように見えました。
しかし続くストレート、DRSを使用したペレスはターン9までに抜き返し、再びハミルトンの前に立ちはだかります。
コース端の砂埃を巻き上げながら加速するペレス。
消耗したタイヤでありながら、鬼神の如き走りで王者ハミルトンを前に行かせません。
ハミルトンにとっての理想的なラインをことごとく塞ぐスーパープレイ。
ここでも「絶対に接触できない」という枷がハミルトンを苦しめますが、それを抜きにしてもペレスのディフェンスは神がかっていたと言っていいでしょう。
8秒もあったハミルトンとフェルスタッペンの差は、ペレスの猛ディフェンスによって1.1秒ほどにまで縮まることとなります。
カメラアングルが変わってハミルトン、ペレスに加え、追いついてきたフェルスタッペンが同時に映る映像は鳥肌もの。
無事に役目を果たし、フェルスタッペンに道を譲ったペレスは、ピットインをしてニュータイヤに交換します。
このペレスの走りはフェルスタッペンをしてレジェンドと言わしめるほど。
第11戦ハンガリーGPにおけるフェルナンド・アロンソのディフェンスもものすごくハイレベルで話題を集めましたが、このようなハイレベルなディフェンス技術が注目されたのも、2021年のF1の特徴であったと言えるかもしれません。
ここまでチームメイトの優勝に貢献する必死の走りが観れたシーズンが他にあったでしょうか。
それも2度も・・・。
諦めないフェルスタッペン
さて、ペレスの活躍によってハミルトンに追いついたフェルスタッペンですが、徐々にまたその差を広げられることとなります。
それほどまでにハミルトンのレースペースは圧倒的でした。
しかし諦めないフェルスタッペンとレッドブルホンダ。
35週目にアルファロメオのアントニオ・ジョビナッツィがコース脇にマシンを止めてバーチャルセーフティーカーが導入されると、即座にピットイン。
再びフレッシュなハードタイヤに交換することで状況の打破を試みます。
フェルスタッペンは2位のままコースに戻りますが、この時点でハミルトンとの差は17秒。
残り周回数を考えると毎周0.8秒ずつギャップを縮めなければならない計算。
その後は、タイヤ交換によりわずかにフェルスタッペンのペースがハミルトンを上回りますが、残り周回するを考えると決して十分なペースとは言えません。
もはや状況は絶望的。
仮に再度ハミルトンがペレスに追いついたとしても、周回遅れのマシンは先ほどのようにブロックすることができません。
フェルスタッペン自身はもちろん、レッドブルホンダとしても自力で逆転することが難しい状況・・・。
おそらく観ているほとんどの人が、レッドブルホンダを応援する人でさえ、このままハミルトンが優勝すると思ったでしょう。
しかし、決して諦めることなく、奇跡を信じてプッシュし続けるフェルスタッペン。
ここで一瞬も諦めずにプッシュし続けたことが、史上稀に見る奇跡的な結末に寄与することとなります。
劇的な逆転勝利
画像引用元:壁紙 | Honda Racing 日本GP 特別展 | Honda
レースは残り5週、ハミルトンが周回遅れを処理する間に12秒差まで追いついたフェルスタッペン。
しかしこのあと自身も周回遅れをパスしなければならず、残り周回数を考えるともはや逆転は絶望的・・・。
レースを完璧にコントロールしたハミルトンがこのまま優勝するであろうと思えた次の瞬間、アクシデントが起こります。
ミック・シューマッハ(ハース)とバトルをしていたニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)が激しくクラッシュ。
コース上にマシンを止めてしまい、セーフティーカーが導入されたのです。
これにより、ここまでハミルトンが築き上げたアドバンテージは一気になくなってしまいます。
そればかりか、レッドブルホンダは即座にフェルスタッペンとペレスにピットインを指示。
両者にフレッシュなソフトタイヤを履かせてコースに送り出します。
ハミルトンと共にここまで異次元の走りで他を圧倒してきたフェルスタッペンは、なんと2位のままコースに復帰。
ハミルトンはというと、フェルスタッペンがピットインせずにコース上に留まる可能性があったため、ピットインを選択することができません。
セーフティーカーラン中のピットインによるロスタイムは約14秒。
しかし、このときハミルトンとフェルスタッペンの間には約12秒しか差がありませんでした。
仮にハミルトンがピットインをした場合、フェルスタッペンがコース上に留まれば、先行を許すことになってしまいます。
しかも残り5周という周回数。
クラッシュしたマシンの撤去に時間がかかれば、そのままセーフティーカーエンドという可能性も十分にあります。
つまり、ハミルトンにはピットインをするという選択肢自体がないに等しかったわけです。
レッドブルは続いてペレスをリタイヤさせるという選択を取ります。
これは、先ほどハミルトンと激しいバトルを演じたペレスが、万が一マシントラブルでコース上にマシンを止めてしまった場合、セーフティーカーが出たままレースが終わることになるため。
つまり、ペレスが獲得するポイントを捨ててでも、セーフティーカーが解除されてレースで決着がつくことに全てをかけたのです。
それでもハミルトンとフェルスタッペンの間には5台の周回遅れが走っていました。
いくら新品のソフトを履いたフェルスタッペンでも、残り少ない周回数でこれらを追い抜いてハミルトンにトライするのは至難の業です。
しかし、残り2周の時点でラティフィのマシンの撤去が終わり、この5台にセーフティーカーを抜く許可が降ります。
セーフティーカーが抜け、残すは最終ラップのみ。
ハミルトンとフェルスタッペンの間には誰もいません。
レース再開。
ソフトタイヤを履き俄然有利なフェルスタッペンが満身創痍のハミルトンに襲いかかります。
ターン5、フェルスタッペンがインに飛び込み、ついにオーバーテイク。
しかしターン9の進入で再びアウトから並びかけるハミルトン。
長い直線でトウを使えたとはいえ、ファイナルラップまで走り切ったハードタイヤで新品のソフトタイヤを履くフェルスタッペンとここまで勝負ができる・・・。
ハミルトンの凄さを再確認できるシーンです。
しかしここを抑え切ったフェルスタッペン。
信じられないペースでセクター3を駆け抜けます。
最終的にはハミルトンを2秒以上も引き離すスーパーラップで、そのままチェッカーフラッグ。
フェルスタッペン初、ホンダ30年ぶりのワールドチャンピオン獲得が決まった瞬間です。
最後のセーフティーカーのタイミング、ほんの2〜3秒フェルスタッペンが後ろを走っていたら、ハミルトンは順位を失わずに安全にニュータイヤに交換することが可能でした。
しかしそれができなかったのは、ペレスのディフェンスがあったから。
そして、フェルスタッペンが最後まで諦めずにプッシュし続けたから。
確かに奇跡的な逆転劇でしたが、レッドブルホンダとフェルスタッペンは、間違いなく自分たちで逆転する“資格“を手に入れていました。
もちろん、58周のレースのうち57周目までレースをコントロールしたハミルトンも、勝者にふさわしかったと言えます。
もしセーフティーかーが入らなければ。
もしセーフティーカーが入るのが、ハミルトンが周回遅れを処理する前だったら。
もしセーフティーカーが入るのがもう少し遅ければ。
実はそのタイミングさえ奇跡的だったと言えます。
しかし、ワールドチャンピオンとは、最終戦だけでなく全てのレースの結果で決まるもの。
2007年のキミ・ライコネンの優勝が、最終戦の結果だけを見て“棚ぼた”などと言われないことと同様、
2021年を通して見たフェルスタッペンは、やはりワールドチャンピオンにふさわしかったと思います。
(21戦サウジアラビアGPのフェルスタッペンはかなりブラックに感じられましたが、結果にはあまり影響していませんね)
あとがき
かくして、フェルスタッペンは自身初のワールドチャンピオンを、
撤退が決まっていたホンダは30年ぶりとなるドライバーズタイトルを獲得。
チームメイトによるディフェンスと、ファイナルラップでの逆転という、まさに劇的な展開でシーズンを締め括ることとなりました。
しかし本当にハリウッドのような展開の数々。
個人的にはcapetaやサイバーフォーミュラのような、まるで漫画やアニメを観ているかのような高揚感を覚えました。
うーん、2021年シーズンはF1史上トップクラスに面白いシーズンだったのではないでしょうか。
このシーズンは『ラッシュ プライドと友情』のように、いつか映画化されてもおかしくない・・・と思います。
というかしてほしい。
バトル中のペレスとか、ファイナルラップのハミルトンやフェルスタッペンとか、スポーツ漫画やジョジョのように時間の流れを無視した思考を描いてほしい(笑
そして、レース後の二人の抱擁も・・・。
ラストは2022年の開幕戦、再びフロントローにこの二人が並んでいたら、最高のエンディングになるのでは。
というわけで、いつまでも自分の中でこの興奮と感動が色褪せぬよう、そしていつでも思い出せるよう、つらつらと書き殴ってみました。
来シーズンはマシンのレギュレーションが大きく変わり、勢力図がどのように影響を受けるのか、またまた開幕戦から目が離せません。
リベンジに燃えるであろうハミルトンと、そのチームメイトに加わるジョージ・ラッセルの関係性や、最終戦で自己最高の4位を獲得した角田裕毅の活躍も見逃せませんね。
またDAZNの見逃し配信で何度も繰り返し楽しめるようなレースがあることを楽しみに、来シーズンの開幕を待ちたいと思います。
それではまた。
小数点のポイントはスプリントレースではなく、雨で全周回数完走できなかったレースでした。
ポイントは各順位半数が与えられたため、コンマ5ポイントが発生しました。
コメントありがとうございます。
すっかり思い込みで書いておりました。
スプリントレースは1位3P、2位2P、3位1Pでしたね。
該当箇所は修正いたしました。
ご指摘ありがとうございました。