レース中、同じ車なのにブレーキ時の安定感や旋回性が全く違うように感じる──そんな経験はありませんか?
その違いを生む要因のひとつがブレーキバランスです。
ブレーキバランスをうまく調整すれば、コーナー進入の安定性が増すだけでなく、旋回スピードやタイヤの持ちまで変わってきます。
そこで、今回はGT7におけるブレーキバランスの効果と、FF・FR・MR・4WDそれぞれに合った設定の考え方をわかりやすく解説していきたいと思います。
ブレーキバランスで変わること【GT7】
ブレーキバランスの設定は、単なる好みの問題ではありません。
数値を少し動かすだけで、マシンの性格やコーナーでの挙動が大きく変わります。
特に、影響が大きいのは次の2点です。
- 旋回性
- ブレーキ時の安定性
旋回性への影響
オーバーステアやアンダーステアが顕著な場合、ブレーキバランスがその対策となることがあります。
具体的には、ブレーキバランスをフロント寄りにすると、リヤのグリップに余裕が生まれ、リヤの安定性が向上してオーバーステアが生じにくくなります。
アンダーステアの場合はその逆で、ブレーキバランスをリヤ寄りにすることで、フロントのグリップに余裕が生まれ、フロントが旋回に専念しやすくなります。
逆に、特にコーナー進入でアンダー、つまり進入時の回頭性がイマイチの場合、フロント寄りにすることで前荷重を作りやすくなり、回頭性が向上する場合もあります。
駆動方式やコーナーの種類、車速や減速の強さによってブレーキバランス変更の影響は変化するため、基本の傾向を理解しつつも、試行錯誤が必要です。
- フロント寄りにすれば必ずしもアンダーになるというわけではない
- リヤ寄りにすると必ずしもオーバーになるというわけではない
- 最適解はコースごとではなくコーナーごとに異なる可能性がある
これらを覚えておくと、好みのセッティングを探すヒントになるかもしれません。
ブレーキ時の安定性への影響
ブレーキバランスはその後の旋回性だけでなく、ブレーキ時の安定性自体にも大きく影響します。
ブレーキ時の安定性を向上させることができれば、タイムロスやスピンのリスクを減らすことが可能です。
タイヤがロックしないように
ブレーキング時に前後どちらかのタイヤが早い段階でロックしてしまうようだと、とても走りやすい車とは言えませんよね。
オーバーステア、アンダーステアの解消を目指したとしても、タイヤがロックするほど極端なブレーキバランスにしては、かえって遅くなる可能性があります。
仮に前輪がロックしやすいようであればリヤ寄りに、後輪がロックしやすいようであればフロント寄りに戻して、安定した姿勢でブレーキができる状態を目指しましょう。
もちろん、ブレーキング時の姿勢の乱れをどこまで許容できるかは運転の仕方(ブレーキの強さやどの程度旋回とオーバーラップさせるかなど)にもよりますし、タイヤマネジメントを最優先とする場合も、必ずしもダメとは言えません(例えばフロントを温存するために多少のリヤのロックを許容するなど)。
しかし、ブレーキバランス決定の大事な要素であることに変わりはないので、最適値を決めかねた際は、ぜひブレーキ時の安定性も判断材料にしてみてください。
特にMRの場合はフロント寄りにしすぎて前輪がロックするということが起こりがちなので、要注意です。
ウェット時のブレーキバランス
先述の通り、ブレーキバランスをフロント寄りにすることは、オーバーステアの解消に効果的な場合があります。
ここで良く生じる誤解が、「ウェットはスピンしやすいから、オーバーステアを解消するため(安定性を向上させるため)にブレーキバランスをフロント寄りにセッティングすればいい」というもの。
まったくの間違いとは言えませんが、必ずしも正解とは限りません。
ウェットでのブレーキングにおいては、後輪より先に前輪のグリップが破綻する場合がほとんどです。
恐らく感覚的にお分かりいただけるかと思いますが、ウェットで”急ブレーキ”をかければ、前輪がロックしてしまい、全くハンドルが効かなくなります。
もしブレーキバランスをフロント寄りにすると、前輪の制動力が増して、さらにロックしやすくなってしまいますよね。
雨のレースでは、とにかく前輪をロックさせないことが大切です。
そのためには、前輪の負担を減らすために、ブレーキバランスをリア寄りにすること。
そもそもウェットでは強いブレーキが掛けられないため、前荷重を作りにくく、後輪にも荷重が残ります。
この特性もリア寄りのブレーキバランスと相性が良い理由で、リヤブレーキを活用して4輪の制動力を効率的に使えるようになります(後ろに残った荷重でリヤブレーキを有効活用できる)。
ただし、減速しながら曲がる場合や長い下りコーナーでは、リア寄りにし過ぎるとオーバーステアやスピンのリスクが残るため、注意が必要です。
ブレーキバランスの具体的な決め方【GT7】
ブレーキバランスは車種※やコース、コーナーによって最適解が変わります。
わかりやすいところでいえば、カタロニアサーキット(シケインなし)やブランズハッチのように中高速コーナーが連続するようなサーキットでは、たいていリヤ寄りにした方がタイムが出やすくなります。
また、大まかに言えば、駆動方式である程度の方向性を決めることもできます。
ここからは、FF・FR・MR・4WDといった、駆動方式ごとの基本的な考え方と、それぞれの特徴を踏まえた具体的な調整方法を見ていきましょう。
※実際はもっと複雑で、同じ駆動方式でも車種ごとに効果が真逆に出るケースもあります。
FF車のブレーキバランスの決め方
FFはフロントエンジン・フロントドライブ。
前輪が駆動と操舵を兼ねるため、前輪のグリップが不足しがちな駆動方式です。
減速からコーナリングにおいて、前輪のグリップが不足するとアンダーステアが生じて曲がりにくくなってしまいます。
なので、基本的には前輪の仕事を軽減させるために、ブレーキバランスはリヤ寄りでOK。
ただし、前後重量バランスも圧倒的に前寄りなので、一発のタイムはややフロント寄りにした方が速い場合もあります。
弱ブレーキでターンインするようなコーナーにおいても、フロント寄りの方が前荷重を作りやすく、回頭性が向上することもありえますね。
リヤ寄りにして旋回性を重視するか、フロント寄りにして制動力を上げ、ストップアンドゴーのような走りをするか。
とはいえ、FFにおいては爆発的な加速を持つ車種はその構造上あまりないので、やはり迷ったらリヤ寄りでOKです。
レースにおいては、速さ以前に前輪の消耗軽減のために、可能な限りリヤに寄せるのがベター。
+4~+5辺りでそこそこ速く走れるようにしておくと、レースでも有利に走れるはずです。
仮に後輪がロックするほどリヤ寄りにしても、FFであればコントロール性やタイムが致命的な影響を受けることは少ないため、何より前輪のマネジメントを優先したいところですね。
FRのブレーキバランスの決め方
FRはフロントエンジン・リヤドライブ。
FRは立ち上がりでオーバーステア(パワーオーバー)が出やすい駆動方式なので、前寄りに設定して少しでも安定感を高めたいと感じる人もいるかもしれませんね。
しかし、実はFRもFFと同様、フロントヘビーでターンイン時に前輪のグリップが不足しがち。
このため、ブレーキバランスはリヤ寄りにした方が回頭性が向上し、気持ちよく、かつ速く走れるケースが多いです。
ただし、立ち上がりでは より慎重なアクセルワークが求められるようになる傾向にあるので、ある程度のドライビングスキルも求められます。
GT7でよく見られるのは、あえて1~2段上のギヤで立ち上がる走法。
トルクを抑えてトラクションの抜けを防止し、安全かつ早めにアクセルを踏み込むことが可能となるため、リヤ寄りのブレーキバランスとも相性バツグンです。
FFと違ってFRは爆発的な加速力を加速時のリヤ荷重で有効活用できるため、加速に優れる車種も少なくありません。
こういった車種の場合、もちろんコースやコーナーによりますが、ブレーキバランスをフロント寄りにしておき、ストップアンドゴーのような走りを意識した方が速い場合もあります。
ガツンと止めて、サッとブレーキをリリースさせて一気に向きを変え、早めにアクセルを開けていくイメージ。
クリップもいつもより奥に置くことを意識します。
一発のタイムを狙いに行くときも、フロント寄りの方が制動距離を短くできるので、-1程度が最適解ということもあり得ます。
しかし、レースにおいてはやはり前輪から消耗していくため、できるだけブレーキバランスはリヤ寄りに設定しておきたいところ。
FRはFFよりリヤがロックしたときのスピンのリスクが高いため、+1~+2程度で考えておくといいと思います。
MRのブレーキバランスの決め方
MRはミッドシップエンジン・リヤドライブ。
基本的に前後重量バランスはわずかにリヤ寄りのことが多く、FFやFRと違って前輪より後輪の方が消耗が激しくなります。
ブレーキング時に荷重が前に乗りにくいのも特徴で、これを解消するためにブレーキバランスをフロント寄りに設定する人も多いです。
しっかりと前荷重が作れれば、ターンインでレコードラインをトレースしやすくなり、タイムが安定する可能性があります。
ただし、あまりにフロント寄りにしすぎると、今度は前荷重が乗り切る前にフロントのブレーキがロックしてしまいます。
ストレートエンドで急制動をかけたとき、前輪がロックしてしまう感覚があれば、フロントに寄せすぎ。
また、フロントに寄せすぎると、前輪のグリップでターンインが改善しても、リヤが安定しすぎたままで、コーナー中盤や立ち上がりでアンダーが出ることも。
ここで無理して曲げようとすると、一転していきなりオーバーステアに転じることもあります。
管理人はブレーキのフィーリング重視で、MRであってもリヤ寄りに設定することも少なくありません。
フロントに荷重が乗せられなくても、リヤ寄りにすればリヤ荷重を有効活用して4輪で止まれますしね。
とまぁこんな感じで、正直MRは最も好みの分かれる駆動方式ではないかと思います。
安定性重視ならフロント寄り、流れるようにコーナーを攻めたいなら、場合によってはリヤよりもあり。
ただし、デイリーレースCや公式戦のように、長丁場のレースにおいて後輪が先に摩耗してしまうようであれば、迷わずフロント寄りに設定するのがおすすめです。
これは、前輪が残り後輪だけが終わってしまうと、かなりクセのあるピーキーな乗り味になってしまうことが多いため。
ただし、前輪がロックするほどフロントに寄せると、当然コーナーの進入は難しくなりますので、要練習です。
一口にMRと言っても、コースや車種、運転の仕方によってはフロントから減ることもあるので、レース中は実際の摩耗具合を見ながら、ブレーキバランスを臨機応変に設定するのもおすすめです。
4WDのブレーキバランスの決め方
別名AWD(オールホイールドライブ)。
エンジンはフロントに搭載されるため、基本的にはフロントヘビーで、前輪の負担が大きく、前輪から摩耗していきます。
FF同様、アンダーステア傾向も強いので、ブレーキバランスはリヤ寄りに設定するのがおすすめ。
リヤ寄りにすることで、前輪を守ると同時に、旋回性を向上させることができます。
ただし、あまりリヤに寄せすぎるとコーナー進入時のターンインがイマイチになることがあるので要注意。
FFやFRと同様、一発の速さではフロント寄りにした方がタイムが出ることもあります。
4WDは元々がFF寄りの車種とFR寄りの車種とがありますが、オーバーステアはあまり怖くないので、まずはアンダーを消す方向で、かつタイヤがロックしない範囲で、いろいろ試してみると良いと思います。
おまけ│RRのブレーキバランスの決め方
RRはリヤエンジン・リヤドライブ。
基本的にリヤヘビーでフロントが軽いので、MR以上に「フロント寄りにした場合の前輪のロック」に注意が必要です。
フロント寄りにしすぎると、前輪がロックしないまでも、重いリヤが暴れる可能性も。
というわけで、リヤ荷重を有効活用するために、基本的にはややリヤ寄りがベター。
ただし、やりすぎるとフロント荷重が足りず、コーナー進入で”どアンダー”が出る可能性もある点には注意が必要です。
少なくともフロントやリヤに極端に振ることはないはずですが、最終的には車種ごと、コースごと、コーナーごとにバランスを見定めたいところ。
とはいえ、現時点のGT7においては、Gr.1~Gr.4の車種にRRは存在しないので、あまり気にしなくて良いかと思います。
レース中のブレーキバランスの変化【GT7】
ブレーキバランスは駆動方式以外にも様々な要因で設定が求められることがあります。
ここではレース途中にブレーキバランスを変更する可能性があるポイントについて、簡単に触れておきたいと思います。
路面状況の変化に合わせる
先の「ウェット時のブレーキバランス」の項を参照。
基本的に路面のミュー(μ:摩擦係数)が下がるほどフロントがロックしやすくなる一方で、ハードブレーキングが減り、リヤ荷重を有効活用しやすくなります。
なので、ブレーキバランスもリヤ寄りに変更していけばOK。
タイヤ温度の変化
スタート直後やアウトラップ(ピットアウト直後の周)はタイヤが冷えているので、安全性重視で通常より1つか2つフロント寄りにするのがおすすめ。
グリップが低ければウェットのときと同じようにリヤ寄りがいいのではと思うかもしれませんが、タイヤが冷えているときに関しては、とにかくリヤのブレイクを防止することが第一。
繰り返しますが、あくまで速さより安全性を重視した考え方です。
タイヤが温まったあとは、走りやすいブレーキバランスに戻してOK。
コーナーごとに合わせる
厳密に言えば、コーナーごとに最適なブレーキバランスは変わる可能性があります。
実際、F1などではコーナーごとに手元でブレーキバランスを変更しているというのは有名な話ですよね。
GT7においても、極限までタイムを削る場合はこういった考え方が有効になる可能性は十分にあります。
例えば、「高速コーナーや高速シケインでは、旋回性を重視してリア寄りにする」、一方「タイトなヘアピンでは、前寄りにしてターンイン時の回頭性を優先する」など。
全コーナー変更するとなると操作ミスのリスクも増えますが、コースによってはセクターごとに変更するというのもあり。
例えば下記の通り(車種や駆動方式で全く通用しないケースもあり得るので参考程度に)
- 富士スピードウェイ・・・セクター1、2(100R)はリヤ寄り、セクター3はフロント寄りにしてコーナーの進入を安定させる
- 鈴鹿・・・セクター1(S字区間)はリヤ寄りでリズミカルに、セクター2(デグナー~ヘアピン~スプーン)、セクター3(最終シケイン)はフロント寄りで堅実に
- インテルラゴス・・・5コーナーまではフロント寄り、あとはリヤ寄りにしてアクセルオンで曲げていく
- モンツァ・・・基本リヤ寄り、シケインでリヤが不安定になるならそこだけ前寄り
- カタロニア(シケインあり)・・・同じく基本リヤ寄り、シケインだけフロント寄りで鋭くターンイン&脱出
- スパ・・・最終~1コーナーだけフロント寄りで、あとはリヤ寄り
タイヤの消耗具合に合わせる
レースが進むとタイヤのグリップは低下し、ブレーキ時の挙動も変わります。
摩耗が進むと前輪がロックしやすくなるため、リア寄りに振って安定性を確保するなど、タイヤ状態に合わせた調整が効果的です。
これは路面状況の変化に合わせる場合と似た考え方ですね。
例外的に、先述のようにMRにおいて極端にリヤだけが減ってしまった場合など、あえてフロント寄りにした方がいいというケースもあります。
燃料の残量に合わせる
燃料が減ると車の重量バランスが変化します。
また、前後重量比が変わることでも挙動が変化する場合があるため、残燃料に応じてブレーキバランスを微調整すると効果的なことも。
もう少し具体的に考えてみると、例えば燃料が減ると総重量が軽くなり、荷重移動量も小さくなりますが、小さくなったフロント荷重に対してフロントブレーキが効きすぎるとロックしやすくなってしまいます。
この場合、ブレーキバランスをややリヤ寄りにして、前後の効きを均等にすることが対策となります。
とはいえ、車種による違いも大きいので、この辺りは実際に試してどうなるか、どう感じるかを優先した方がいいですね。
基本的には車重が軽くなれば走りにも余裕が出てくるはずなので、よほど違和感がなければあまり気にしなくていいかもしれません。
まとめ│積極的にブレーキバランスを変えて最適解を探すべし
ブレーキバランスの数値を1〜2動かすだけでも、マシンの挙動は大きく変わります。
駆動方式や路面コンディション、コース特性、さらにはドライバーの好みによって最適値は異なるため、「絶対的な正解」というものはありません。
場合によっては、紹介した向きとは逆に設定した方が良いということも大いにあり得えます。
管理人もリヤよりにしてタイムが安定してきたところで、急にフロント寄りに変えるとタイムが跳ね上がるということがよくあります(原因不明w)。
まずは基本的な傾向を理解し、少しずつ数値を変えて自分の走りに合うポイントを探すことが大切です。
挙動の変化を体感しながら、ぜひ あなたのドライビングスタイルに合うブレーキバランスを見つけてください。
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