2019年11月末、政府が自動ブレーキの搭載を義務化する方針にあることが一斉に報じられました。
2021年11月以降に販売される軽自動車を含む国産新型車を対象に、既に最終調整に入っているとのこと。
年内にも正式発表される見込みだそうです。
対象となるのは国産新型乗用車とのことですが、気になるのは既存車、特に中古車の扱いがどうなるのか。
加えて、義務化される自動ブレーキの性能の基準や、自動ブレーキの義務化のメリット・デメリットを考えてみたいと思います。
自動ブレーキの義務化!既存車や中古車、輸入車はどうなる?
今回の義務化は「国産新型車」が対象と報じられています。
新型車とは、まったく新しい車やモデルチェンジがされた車のこと。
これだけを見れば、引き続き既存車種に乗る分には自動ブレーキがなくても問題はない(規制の対象とならない)と考えるのが普通でしょう。
この辺りを別の視点から裏付けしてみたいと思います。
ちょっと心配なのは「自動ブレーキのない車(中古車)を2021年11月以降に購入する場合」。
今でこそ軽自動車でも標準装備されていたり、オプションやグレードで選択が可能な自動(衝突被害軽減)ブレーキですが、ほんの5年ほど前はまだ過渡期でした。
このため、自動ブレーキが搭載されていない中古車もまだまだ市場にあふれている状態です。
ここで気になる情報があります。
新型の乗用車は早ければ2021年度から、既存の車種はその数年後から義務づける方向で調整している。
えーっと・・・^^;
既存車にも義務付け?
その頃には自動ブレーキを後付けできる仕組みでも出来上がるんでしょうか・・・。
と思ったのですが、これは恐らく早とちり。
ここで言う「既存の車種」とは、「継続して生産される車種」のことを指すと思われます。
調べてみると「既存の車種やモデルは2025年12月以降生産分から義務化される」との情報も出てきます。
となれば、これは「新型車は自動ブレーキ付きでデビューしないとダメだよー!継続生産車種には数年の準備期間をあげるから、それまでにマイナーチェンジで対応してね♪」ということみたいですね。
実際に2輪車のABSの義務化がこんな感じで、新型車は2018年10月発売以降のモデルからABSが既に義務化されており、継続生産車は2021年10月以降生産分から義務化される予定です。
そもそも、報道がなされた2019年11月現在でも自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を装備していない車って山ほど存在しますし、「これらに全て取り付けろ」なんて話になったら、巨大な中古車市場、中古車業界が死んでしまいます。
また、過去の事例に目を向けると「シートベルトの義務化」が参考になりそうです。
かなり大昔の話になりますが、国内でシートベルトの装備が義務化されたのは1969年4月。
これ以前に国内で生産された車には、当然シートベルトがない車も存在します。
では、今そんな車に乗ったらシートベルト着用義務違反になるのでしょうか。
答えは否。
シートベルトの取り付けが義務化される前の車については、シートベルトを取り付ける必要がないばかりか、シートベルトを着用せずに走っても問題ありません。
恐らく今回も同じようなかたちになるでしょう。
というわけで、古い車は規制対象外のまま、せいぜいそのうち税金が高くなるとか、任意保険で割引が効かないとか、その程度で済むと思われます。
輸入車はどうなる?
今回の規制はあくまで国産新型車がターゲットとされています。
輸入車については、既存の車種と同様、ある程度の猶予期間が設けられるでしょう。
猶予期間なしなら、わざわざ「国産新型車」に絞るような言い方はしないでしょうし、「輸入車なら新しい車でも自動ブレーキなくていいよ!」というのも考えにくいですよね。
自動ブレーキの義務化!気になる性能要件(基準)は?
今回の自動ブレーキの義務化、自動ブレーキであれば何でもアリというわけではないようです。
その基準は、2020年1月発行見込みの国際基準が採用される見込み。
その国際基準が求める要件とは以下の通り。
- 静止車両、走行車両、歩行者に対して試験を行ない、所定の制動要件を満たすこと。
- エンジン始動のたびに、システムは自動的に起動してスタンバイすること。
- 緊急制動の0.8秒前(対歩行者の場合、緊急制動開始)までに警報すること。
ここで言う「所定の制動要件」とは、
- 静止車両に40km/hで接近して衝突しないこと
- 20km/hで走行する車両に60km/hで接近して衝突しないこと
- 5km/hで横断する歩行者に30km/hで接近して衝突しないこと
の3つ。
うーん、これだけだとちょっと不鮮明ですよね。
特に横断する歩行者・・・。
100m先を横断されればニアミスすらしないでしょうが、当たり屋のように3m先で横断されたら絶対に止まれません。
いまいちピンときませんが、実際はもっと事細かに定められた基準があるのでしょうね。
詳細はこちら
とにかく、重要なのは国際基準に則った義務化がなされるということです。
これにより、自動ブレーキ自体の性能の底上げも期待できそうです。
自動ブレーキの義務化で考えられるメリットとデメリット
自動ブレーキは車社会の安全性を向上させるうえでかなりの貢献をしてくれると予想します。
今「自動ブレーキに頼るようなやつが事故を起こすんだ!運転はそもそもドライバーが注意しなければいけないんだ!」と批判的な人も、いつ自動ブレーキに助けられる日が来てもおかしくありません。
100%正確かつ安全に運転できる超高性能AIのような人がいたとしても、周りから降りかかる事故を防げるとは限りません。
しかし自動ブレーキが普及すれば、そんなグロージャンミサイルのような危険な車から被害を被るリスクはかなり低くなります(もちろんレースでは無意味ですケド)。
また、先述の通り自動ブレーキの性能の底上げも期待できますね。
一方のデメリットは、市販車の価格高騰の可能性です。
自動ブレーキの有無による価格差は車種にもよりますが、自動ブレーキと他の安全装備のセットで10万円以上の差額となることは珍しくありません。
出番のあるかどうかわからない装備に10万円というのは、人によっては抵抗があるかもしれません。
まぁ保険の一種だと思えば高くはないと思いますが・・・。
保険といえば、自動ブレーキがついている車は任意保険で優遇されるケースが増え始めています(ASV割引)。
この点を差し引けば、あまり大きなデメリットはないと考えて良いかもしれませんね。
まとめ
まとめると、現時点で分かっている情報は以下の通り。
- 義務化の対象となるのは2021年11月以降に販売される国産新型車
- 既に販売されている車は対象外の可能性が濃厚
- 既存者(継続生産車種)及び輸入車には一定の猶予期間が与えられる
- 義務化される自動ブレーキの性能には一定の要件がある
2019年11月時点の情報を基にした推測を含みますが、少なくとも焦って自動ブレーキつきの車に乗り換える必要はないので、ご安心を。
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