昨今は燃費の良い車ほど売れる傾向にあり、自動車メーカー各社もコンパクトカーやミニバンを中心に熾烈な燃費競争を繰り広げています。
実はこの”燃費”、運転方法でもかなり変化するのです。
今回はその中でも最も代表的な方法として、加減速に着目した燃費向上の方法についてお伝えします。
具体的なテクニックに加え、まずは加減速がもたらす燃費への影響を見てみましょう。
加速と燃費の関係
車はアクセルを踏み込むことで燃料が消費され、前に進みます。
つまり、まず重要なのは”アクセルワーク”ということです。
燃費を向上させる上で気を付けたいアクセルワークのポイントは次の2つです。
- 急加速をしないこと
- ゆっくり加速しないこと
一見相反することのようにも思えますが、読み進めていただければ納得していただけるはずです。
アクセルワークの練習方法についてはこちらの記事にもまとめています↓
1.急加速はNG
よく言われるのが「急加速は燃費に悪い」ということです。
実際、静止状態から急激に加速すると慣性力が強く働き、燃料を多く消費します。
これは力学の一番基本的な公式「F=ma」からも簡単に理解することができます。
この公式はニュートンの運動方程式と呼ばれ、車に置き換えれば車重”m”の車を加速度”a”で走らせるためにはエンジンのもたらす力”F”が必要になるということを表します。
つまり、急な加速をしようとするほど大きな力が必要となり、その分燃料を消費してしまうということです。
わかりやすく言えば、倍の加速度で車を走らせようとするのと、車重を倍にするのは同じくらい燃費に影響するということです。
それくらい、加速の仕方が重要ということですね。
※上記の計算はイメージのために簡略化したもので、実際は機械的なエネルギー損失や空気抵抗などの影響により、もっと複雑な計算になります。
2.加速が鈍すぎてもNG?
ゆっくりすぎる加速は、同じ速度に達するまでの時間と走行時間が長くなり、かえって効率が悪くなる恐れがあるので注意が必要です。
そのため、先の「急加速をしないように」というのは、「体感できる加速”G”をなるべく減らすこと」を心がける程度で十分だと思います。
この辺りは車種によっても違うので何とも説明しづらいのですが、タコメーターがあれば回転数を目安にするのも一つの方法です。
一般的にエンジンは高回転になるほど燃料消費が大きくなるからです。
また、ゆっくり走りすぎて信号の度に止まっていては逆に燃費が悪くなるので注意してください。
これは、続く「減速と燃費の関係」にも関連してきます。
減速と燃費の関係
車を目的地まで走らせるためには、車を前に進めなくてはいけません。
当たり前のことですが、大切なことです。
さて、減速をして車が停止したらどうなるでしょうか。
このままでは目的地に到着できないので、再加速する必要がありますよね。
ブレーキとは”車が前に進むためのエネルギー”をローターとパッドの摩擦によって”熱エネルギー”に変換して放出する装置、つまりは「スピードを捨てるための装置」です。
ここで捨てた分のエネルギーは、またエンジンが頑張って生み出さないといけません。
この”加速のためのエネルギー”を生み出すために消費されるのが”燃料”です。
つまり、減速の機会を減らすということは加速の機会を減らすということでもあり、結果的に燃費向上につながるというわけです。
燃費を向上させる走り方
さて、ここまでの知識を総動員して燃費を向上させる走り方を考えてみましょう。
気を付けたいポイントは次の3つです。
- 無駄な加速をしないこと
- 車間距離を大きく取ること
- 直線的なラインを取ること
順番に見ていきましょう。
無駄な加速をしない
例えば「次の信号が赤とわかっているのに、ついアクセルを踏み続けてしまう」という人はいませんか?
このとき、アクセルを踏み続けることで得たスピードは、結局ブレーキによって全て捨てられることになります。
であれば、そもそも加速せずに惰性で走った方が得策なのは明らかですね。
ゆっくりと交差点を目指せば、その間に青信号に変わる可能性もあります。
そうなれば交差点で停止せずに済むので、減速が省略できた分、加速も省略することができるため、燃費向上につながります。
ただし、「右折信号に間に合うはずの後続車」などの邪魔にならないよう、減速時は周りには気を配りたいですね。
車間距離を大きく取る
例えば前走車がウインカーも出さずに急にブレーキを踏んだ場合、車間距離がなければそれに合わせてブレーキを踏まざるを得ません。
しかし十分に車間距離が取れていれば、前走車が減速してもアクセルを離す程度で済む可能性があります。
例えば前走車が加速と減速を繰り返していた場合、車間距離がなければ一緒に加減速を繰り返さないといけません。
しかし十分に車間距離が取れていれば、前走車の動きに関係なく一定速度を維持して走ることが可能です。
このように車間距離を大きく取るだけで、結果的に燃費を向上させることができる場合があります。
直線的なライン取り
より直線的に走ることができれば、それだけ車体にかかる遠心力を軽減することができ、車速を維持してカーブを曲がれるようになります。
すなわち、ライン取りは速く走るためだけのテクニックに留まらず、乗り心地や燃費を向上させることにも一定の効果をもたらすということです。
代表的なライン取り、アウトインアウトはスポーツ走行をしない人でも、その名称を聞いたことくらいはあるかもしれませんね。
詳しくはそれぞれ別記事にまとめています↓
多くの公道はもともと道幅が狭いため、4輪車においては普段と大きな違いが出るほどラインを変更することはできませんが、特に2輪車(バイク)においては一定の効果が期待できます。
ただし、やりすぎて車線からはみ出すなんてことがないよう、十分に注意してくださいね。
エンジンブレーキを有効活用する
シフトダウンをして強いエンジンブレーキをかけるとエンジン大きく唸るため、「エンジンブレーキを効かせると燃費が悪くなるのではないか」と考える人もいるかもしれませんね。
しかし、実はエンジンブレーキが働いている間はほとんど燃料が消費されていません。
エンジンブレーキとは、ざっくりと言えば「エンジンが自発的な回転を止めることでただの抵抗の塊となり、その抵抗によりタイヤ側の回転を落とすもの」です。
詳細と「エンジンブレーキを利用するメリット」についてはこちらの記事に詳しくまとめています↓
おまけ リフトアンドコーストとは?
最近F1でよく耳にする「リフトアンドコースト」というワード。
これも燃費向上のためのテクニックです。
”リフト”とはアクセルペダルから足を浮かせること、”コースト”とは惰性で滑走することです。
つまり、「アクセルもブレーキも踏まずに滑走する」ということです。
厳密にはエンジンブレーキによる減速が働きますが、それゆえ下り坂などでは有効活用することが可能です。
まとめ
燃費を向上させるには、とにかく無駄にアクセルを踏まないこと。
そのためには無駄な減速をしないこと。
加速も減速も必要最低限とすることが、燃費向上の近道です。
また、これを実現するためには車間距離を取ってのんびりと走るのが最も効果的です。
このほか、”極力高い速度を維持して走る”ということはスポーツ走行にも通じるテクニックですし、加減速が少なくなれば乗り心地も向上し、車間を取れば安全運転にもなります。
是非参考にしてみてください♪