意外とエコ?「エンジンブレーキ」を積極的に利用する5つのメリット

エンジンブレーキを使う際は後方に注意 車の挙動

みなさん、普段の運転でエンジンブレーキを有効活用していますか?

そもそもどうやったらエンジンブレーキを使うことができるのか、その辺りから怪しい人もいるかもしれませんね。

 

そこで、今回はエンジンブレーキの簡単な仕組みと、エンジンブレーキを利用するメリットについてまとめてみました。

街乗りにおいては絶対に必要というものではありませんが、実はエンジンブレーキを用いると運転がスムーズになったり、燃費の改善やパーツの消耗を軽減することができるんですよ!

 

エンジンブレーキとは?

Googleで「エンジンブレーキ」と検索すると「エンジンブレーキ どこ」、「エンジンブレーキ どれ」といった検索候補が出てきますが、スイッチやレバーなどを操作して効かせるものではないのでご注意を。

エンジンブレーキとは、エンジンや駆動系にかかる“抵抗”を利用してタイヤの回転数(すなわち車速)を下げるテクニックのことです。

テクニックと言うのも大げさですが・・・。

もっとわかりやすく言えば、加速状態からアクセルペダルを戻すとそのままの速度を維持せず勝手に減速しますよね?アレがエンジンブレーキです。

 

車はエンジンの回転をタイヤに伝えることで動きます。

言い換えれば、「エンジンの回転を利用してタイヤを無理やり回す」ということです。

エンジンブレーキはこの逆。

走行中にエンジンが自発的な回転をやめると、エンジンは回転しているタイヤに無理やり回されることになります。

ところがエンジンや回転を伝達するトランスミッションなどの駆動系には大きな抵抗があり、そう簡単には回ってはくれません。

結果、タイヤ側の回転は徐々に減衰していくこととなります。

これがエンジンブレーキの正体です。

 

エンジンブレーキは選択しているギヤによってかかり方が異なります。

自転車などもそうですが、最初から高いギヤではうまくタイヤを回すことはできませんよね。

これと似たイメージで考えていただくとわかりやすいと思います。

具体的には、エンジンブレーキはギヤが高い方が弱く、低い方が強くかかります。

 

例外として、ニュートラル(N)に入れた場合はエンジン側の回転とタイヤ側の回転が完全に切り離されるため、エンジンブレーキは効かなくなります。

当然この状態でも空気抵抗やタイヤなどが回転する際の機械的抵抗によって少しずつ減速しますが、その減速の度合はエンジンブレーキを効かせているときとは大きく異なります。

エンジンブレーキはエンジンや駆動系の抵抗を用いた減速方法!

 

エンジンブレーキを使うメリット

車を減速させようとしたとき、多くの人はブレーキペダルを踏むことで作動する「フットブレーキ」を用います。

「フットブレーキだけで十分に止まれるのだから、エンジンブレーキなんて要らないだろう」と考える人もいるでしょうが、実は公道においてもエンジンブレーキの使用が推奨される場面がいくつかあります。

エンジンブレーキを使うことでどのようなメリットが得られるのか、ここが理解できれば運転の幅が広がるはずです。

 

メリット1.フットブレーキの性能低下を回避できる

例えば長い下り坂を走る際に気を付けたいのが、いわゆる“フェード現象”と“ペーパーロック現象”。

フットブレーキはエンジンブレーキと異なり、“車が進もうとする運動エネルギーを熱エネルギーに変換して捨てる装置”です。

このため、フットブレーキを連続して長時間使用すると膨大な摩擦熱が蓄積し、結果的にブレーキの性能が著しく低下するのです。

最悪、フットブレーキが一切効かなくなってしまいます。

こういった事態を回避する手段として、エンジンブレーキを使用することはとても有効です。

現在はブレーキパッドの性能も向上していて「数分ブレーキを効かせ続けたところで簡単にはフェードを起こしたりはしない」と言われることもありますが、特に車重が大きい車はブレーキにかかる負担も大きいため過信は禁物です。

長い下り坂に差し掛かったら、エンジンブレーキを積極的に活用(併用)してブレーキの負担を軽減させると同時に、ポイントポイントでブレーキペダルを離してブレーキパッドの冷却を試みましょう。

 

メリット2.ブレーキパッドの消耗を軽減できる

エンジンブレーキを有効活用すればフットブレーキの負担が減り、ブレーキパッド等の消耗を抑えることができます。

どこまで消耗を抑えることができるかは車や環境、ドライバーの腕によっても異なるため一概には言えませんが、同じ車に乗る間にブレーキパッドの交換を1回でも減らすことができれば、それは十分大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

 

また、後輪駆動車の場合はタイヤの摩耗にも好影響をもたらします。

通常、車が減速する際は前荷重がかかり、かつフロントブレーキの方が効きが強いため、フロントタイヤが強く摩耗します。

ところが、エンジンブレーキを用いると駆動輪(後輪)が減速しようと働くため、フロントタイヤにかかる負担を分散することができるのです。

 

メリット3.燃費を向上させられる

減速時にシフトダウンをした場合、当然回転数が上昇してエンジンブレーキが強くかかることになります。

このときエンジンが大きくうなるため、その分燃費が悪化すると思う人もいるかもしれませんが、実際はその逆です。

タイヤ側の回転数にエンジンの回転が吊り上げられているだけで、燃料を必要していない状態なのです。

必要のない燃料は電子制御により供給されなくなります(燃料カット)。

ちなみに、いくらエンジンが高回転になってもレッドゾーンへ入らなければ壊れるということはそうそうありませんから安心してください(最近のAT車ならレッドゾーンへ入らないように電子制御してくれるので更に安心です)。

 

逆にシフト操作をせずにブレーキのみで減速した場合、エンストしないようにコンピュータが自動で燃料を消費してエンジンの回転を維持しようとします。

このときの燃料消費量はアイドリング時と同等かそれ以下ですが、エンジンブレーキの有効活用による燃料カット時と比べれば燃費は悪化してしまいます。

 

また、緩やかな下り坂でニュートラル(N)を選択してブレーキで速度を調整しながら走る人がいますが、これもあまりエコではありません。

ニュートラルで坂道を下っているとき、先ほどと同じようにエンジンは回転数を維持するために燃料を消費(アイドリング)してしまいます。

同じ“減速”であれば、「アイドリング状態+ブレーキ」よりも「エンジンブレーキ(燃料カット)」の方が断然エコ。
例えば峠道などを走ると登りでいつも以上に燃料を消費しますが、下りはエンジンブレーキを有効活用することでほとんど常に燃料カット状態で走ることが可能なため、総じて街乗り以上に燃費が良くなることもあり得ます。

 

メリット4.駆動力が途切れないため車体が安定しやすい

特にスポーツ走行時のコーナリングにおいて言えることなのですが、車体は縦方向の力(駆動力)が加わっていた方が安定します。

この縦方向の力は加速方向である必要はなく、実はフットブレーキやエンジンブレーキを効かせることでも同様の効果があるのです(言うなれば“マイナス駆動力”)。

またその効果は力の大きさによって異なり、エンジンブレーキをかけながら旋回する際は、低いギヤを選択していた方が曲がりやすく、逆に高いギヤでは車体が不安定になります。

ニュートラルの状態ではロール(横方向の車体の傾き)が激しく、怖さを感じることもあるでしょう。

ブレーキを離してから間髪入れずアクセルを踏み込むようなコーナーではあまり問題になりませんが、アクセルを踏み込むのを一瞬待つというシーンも多々存在します。

そのため、出来ればコーナー入り口でシフトダウンし、エンジンブレーキを有効活用したいところですね。

MT車においては、コーナー入り口でシフトダウンをするためにヒール&トウというテクニックが必須となります。

ヒール&トウに関してはこちらの記事にまとめています↓

MTスポーツ走行における必須テク!ヒール&トウとは?(知識編)
「シフトダウンをするとガクっとショックがあり、乗り心地が悪い」 「素早くシフトダウンすることができない」 「無理にシフトダウンしたらタイヤが滑って怖い思いをした」 MT車に乗っていてこのように感じたことはありませんか? 実はMT車の運転には...
MTスポーツ走行における必須テク!ヒール&トウのやり方(練習編)
スポーツ走行をする人たちの間でいまだに根強い人気を誇るMT車。 しかしMT車を乗っている人の中で、正しくヒールアンドトウを実践できている人はどの程度いるでしょうか。 MT車に乗る理由は人それぞれですが、少しでもスポーツ走行をしたいのであれば...

 

メリット5.ブレーキランプを点灯させずに減速できる

エンジンブレーキを使用した際はブレーキランプが点灯しません。

当然後続車への合図なしに減速することになるため、エンジンブレーキの代表的なデメリットとして語られることも多いのですが、とある場面ではメリットとして考えることが可能です。

その場面とは、高速道路における速度調整を行うシーン。

高速道路においては1台がブレーキを踏むと、後続車が「渋滞か、何か障害物があるのか、急減速が必要なのか」などと考え、必要でもないのにつられてブレーキを踏んでしまうことがあります。

前走車のブレーキによって後続車がブレーキを踏んだ場合、後続車は前走車のブレーキランプが消えて加速したのを確認してからブレーキを離し、再加速をはじめますよね。

つまり、後ろの車の方があとまでブレーキを踏んだ状態が続くということです。

これが連鎖すると、いずれ後方の車はかなり長時間ブレーキを踏むこととなり、自然渋滞が発生します。

よく下り坂から上り坂へ移行する“サグ部”と呼ばれる個所で、前走車の減速による後続車のブレーキとその連鎖によって自然渋滞が起こると言われますが、平坦な道でも前走車がブレーキランプを点灯させれば似た現象が起こり得るというわけです。

この点、エンジンブレーキによって速度を調整して車間を維持することができれば、先のブレーキランプによる自然渋滞が起こるリスクを減らすことができます。

追い越し車線を猛スピードで走り、前走車に追いついたらブレーキを踏むような走り方をする車をよく見かけますが、まさに“百害あって一利なし”。

 

ただし、高速道路において安全にエンジンブレーキを使用するには次の条件があります。

  • 急激な減速とならないこと(あくまで車間維持のための速度調整)
  • 前後の車間が十分に確保されていること
  • ブレーキランプを点灯させる必要がないこと

例えば、落下物回避のためなどであればブレーキを踏んだ方が後続車に知らせるという意味でベターです。

 

エンジンブレーキのデメリット

平坦な街中を走る限りはエンジンブレーキは必須のテクニックではありませんが、使えた方がより安全に、よりエコに走ることが可能なのは間違いありません。

ところが、エンジンブレーキが効きにくい車(後述)もありますから、過信は禁物。

減速する能力においてはエンジンブレーキよりもフットブレーキの方が圧倒的に優秀だということを忘れないようにしましょう。

 

雪道におけるエンジンブレーキは危険!?

特に気を付けたいのは悪路を走行する場合。

「雪道ではフットブレーキよりエンジンブレーキを用いた方が安全」という話を聞いたことはありませんか?

個人的にはこれは間違いだと考えています。

なぜなら、今やほとんどの車にABS(アンチロック・ブレーキ・システム)が装備されているから。

フットブレーキでタイヤがロックしても、ABSのおかげでコントロール不能に陥ることはほとんどありません。

エンジンブレーキで減速しようとした場合は駆動輪のみ急激に回転が下がるため、前輪後輪の回転差が生じますが、滑りやすい路面ではこの回転差を吸収しきれず、車が不安定な状態となったり、最悪スリップしたりします。

コーナリング中にシフトダウンすれば即スピンする可能性すらあります。

(※大型バイクなどには“バックトルクリミッター”と呼ばれるシフトロックを防ぐ機構が搭載されている場合があり、この限りではないかもしれません。まぁバイクで雪道はそうそう走らないでしょうが・・・。)

ただし、緩やかなエンジンブレーキであればフットブレーキより安全に減速することが可能なのも事実。

緩やかなエンジンブレーキを得るには“シフトダウンをしないこと”、つまりアクセルを離すだけでOKです。

下り坂に入る前にあらかじめ低いギヤを選択しておくというのも有効ですね。

 

ブレーキランプが点灯しない

先ほど“メリット5”としても紹介しましたが、エンジンブレーキを使用した際は“ブレーキランプが点灯しない”という点にも注意する必要があります。

ブレーキランプを点灯させる必要があると思われる場面では、どんなにメリットが大きくてもしっかりとフットブレーキを併用してくださいね。

特に急激に減速する場合は、後続車に知らせるという意味でも必ずフットブレーキを使用しましょう。

またエンジンブレーキを使用する際は、後方の車間距離が十分にあるかどうかもチェックすることが大切です。

 

おまけ AT車でエンジンブレーキをかけても無駄?

ちょっと釣りっぽいタイトルになってしまったので結論から言いますが、そんなことはありません。

 

よく聞くのが、「トルコンATはエンジンブレーキが効きにくい」という意見。

トルコンとはトルクコンバーターの略で、ATフルードと呼ばれる粘土の高い液体を介して動力を伝える一般的なATの機構です。

確かに“液体を介すため伝達ロスが大きくエンジンブレーキが効きにくい”というのは事実ですが、昨今のAT車はこの欠点を補うため、ATフルードを介さずに機械的に接続する“ロックアップ機構”が搭載されています。

ロックアップ機構がなくても効きにくいだけで、「ATでエンジンブレーキをかけても無駄」なんてことはありませんから、積極的にエンジンブレーキを活用しましょう。

 

更に言えば、管理人は“より車重の大きいトルコンAT車”よりもエンジンブレーキの効きが悪いMT車を知っています。

特に最近は燃費を向上させるためにフライホイールが重い車も多く、これがエンジンブレーキの効きの悪さにも影響しています。

フライホイールが重いとその惰性モーメントにより回転数を維持できる(つまりエンジンブレーキが効きにくい)ため、惰性で長い距離を進むことが可能となり燃費が良くなります。

 

有名どころで言えばロータリーエンジンを搭載するRXシリーズなどはエンジンブレーキの効きが悪いと言われていますね。

これはエンジン内の摩擦抵抗が小さいことも原因の一つですが、アイドリングの安定と細いトルクを補うために“重いフライホイールを搭載”していることも影響しています。

 

そんなわけで、個人的にはエンジンブレーキの強さに関しては「トランスミッションによる差」よりも「車種による差」の方が大きいと感じています。

 

あとがき

エンジンブレーキを有効活用することができれば、車体を労わりながらスムーズに、かつ安全に走ることが可能になります。

最近は“パドルシフト”が装備されている車種も多く、AT車やCVT車でも気軽にシフトチェンジを楽しむことができるようになってきました。

是非有効活用して運転の幅を広げてみてください。

日々の通勤、通学が楽しくなるかもしれませんよ♪