あなたは普段ブレーキペダルを踏むとき、かかとを床につけていますか?それとも浮かせていますか?
ちなみに管理人はかかとをつけて運転しています。
つけるといっても、常にかかとが床から離れないように意識しているわけではなく、かかとが床に触れるか触れないか、といった感じ。
そのため、ブレーキペダルを少しでも強く踏もうとすると勝手にかかとが床から離れます。
おそらくかかとをつける派の多くは同じ動きをしていると思いますが、だとすると普段からかかとを浮かせるメリットとは・・・?
なぜ一部の教習所ではかかとを浮かせてブレーキを踏むように指導するのでしょうか。
今回はその理由を深掘りしてみましたが、うーん・・・。
なぜ教習所ではかかとを浮かせてブレーキペダルを踏むように指導するのか
一部の教習所ではブレーキペダルを踏む際にかかとを浮かせるように指導することがあるみたいですね。
なぜかかと浮かせないといけないのでしょうか。
詳しくは後述しますが、どうやら「緊急時に確実にブレーキペダルを踏み込むため」のようですね。
しかし、果たしてこの考え方は正しいのでしょうか。
確かにかかとを軸に足首でペダル操作をするより、かかとを浮かせて足全体でペダルを踏んだ方が強い力で踏み込めます。
この点は間違いなくかかとを浮かせている方が優れるでしょう。
しかし、そもそも「かかとをつけて運転する人は本当に常にかかとをつけているのか」という根本的な問題があります。
試しにイスに座った状態でかかとを床に、つま先を壁に立てかけるように当て、指の付け根の辺りで壁を“強く”押してみてください。
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どうでしょう。かかとが床から離れようとしませんでしたか?
確かに、少し踏むだけならかかとを軸に足首だけを動かしてペダルを操作することが可能です。
しかし、強く踏み込もうとすればかかとは自然に床から離れます。
つまり、急ブレーキが必要な際は勝手にかかとが浮くんです。
かかとをつけて運転する場合も、ブレーキ操作の際はかかとではなくつま先を意識します。
当たり前ですね。
そして、つま先に力を込めれば自然とかかとは床から離れます。
このとき、緊急時にもかかわらずかかとを床につけることにこだわる人はいません。
なぜなら、かかとを床につけるという行為は「繊細な操作を可能とするため」、「より小さい力で操作をするため」に無意識に行っているからです。
ならば、普段からかかとを浮かせることを意識するメリットって何でしょうか。
そもそもブレーキペダルに体重をかけて踏み込むような操作が今の車に必要なのでしょうか。
40~50年前のブレーキがプアでペダルが重い車ならともかく、今街中を走っている車のほとんどは十分なブレーキをかけるのにそれほど大きな力を必要としませんよね・・・。
かかとを浮かせてブレーキを踏むデメリット
かかとを浮かせるメリットはわからなくなりましたが、デメリットは明確です。
- 繊細な操作が難しい
- 足が疲れやすい
- 踏み間違いのリスクがある
これらのデメリットはかかとを床につけていれば現れません。
かかとを床につけた場合とつけない場合、それぞれを比較しながら3つのデメリットを解説したいと思います。
1.繊細な操作が難しい
かかとを浮かせた場合は繊細なブレーキ操作が難しく、いわゆる「カックンブレーキ」になるリスクがあります。
なぜ繊細なブレーキができないのでしょうか。
これは、逆に「なぜかかとを床につけると繊細なブレーキができるのか」を考えるとわかりやすいかもしれません。
例えば鉛筆で字を書くとき、机に手首をつけた場合と浮かせた場合、圧倒的につけた場合の方が安定しますよね。
かかとを足につけるというのはこれと同じで、要するに支点をつくることで末端の動きを安定させられるということ。
かかとを浮かせると支点と末端が離れるため、繊細なブレーキ操作が難しくなるわけです。
ところで、ブレーキはかかとを浮かす浮かさないの論争が起こりますが、アクセルについてはほとんど全員がかかとをつけて操作しているはずです。
ブレーキならカックンブレーキ程度で済みますが、アクセルだったら不意の急加速につながって危険ですからね。
もちろん、かかとを浮かせていても正しいドライビングポジションと慣れがあれば繊細なペダル操作ができないわけではありません。
ただ、少なくともやりやすさはかかとをつけた方が上ですね。
2.足が疲れやすい
これは繊細な操作ができないのと同じ理由です。
足の重さをモモとブレーキペダルのみで支えなければならないため、かかとをつける場合より足にかかる負担が大きくなります。
しかも繊細な操作が難しいとなれば、余計に神経を使うというものです。
普段の通勤通学程度であればそれほど疲れることはないかもしれませんが、長距離を運転したり渋滞にハマったりすると、結構大きな差になるのではないでしょうか。
「(かかとをつけて)足首の力だけでブレーキペダルを操作をするなんて、その方が疲れるんじゃないか」という意見もあろうかと思いますが、先述の通り強く踏み込むとき(力が必要なとき)は勝手にかかとが離れるのでご心配なく。
3.踏み間違いのリスクがある
かかとを床につけてペダル操作をする場合、アクセルとブレーキの2つのペダルを踏みかえてもかかとが床から離れることはほとんどありません。
少なくとも一度膝を上げて踏み直す必要はないわけです。
一方、かかとを浮かせてブレーキペダルを踏む場合、アクセルからブレーキへ踏みかえるタイミングでどうしても足が宙ぶらりんの状態になりますよね。
この状態から正しくブレーキペダルに到達するには、より三次元的な空間把握と正確な動作を必要とします。
こちらの方が圧倒的に「慣れ」を必要とする操作です。
中には「もともとかかとをつけて運転していた人が、足首の筋力の衰えで体重を利用できるかかとを浮かせた運転に切り替え、不慣れゆえに踏み間違いを起こす」と“推理”する人もいますが、
もしこれが正しいのであれば、かかとをつけた運転ができなくなった時点で免許を返納すべきであって、これはもはや別の問題と言えます。
そもそもこの推理も、結局「かかとを浮かせた操作の方が踏み間違いを起こしやすい」と言っているようなものですよね。
かかとを浮かせたブレーキは教習所で習ったから正しいはず?
かかとを浮かせてブレーキを踏むように指導される理由の一つは、表向きには「緊急時に確実にブレーキペダルを踏み込むため」と言われています。
また、「ブレーキペダルが重い車でもしっかりと操作できる(奥まで踏み込める)こと」も理由のようです。
しかし先述の通り、普段かかとを床につけていてもブレーキペダルを踏み込む際は自然にかかとが離れますし、今や体重をかけなければ踏み込めないほど重いブレーキペダルもそうそうお目にかかれません。
30年前の車だってかかとを床につけた状態で十分に操作できます。
表向きの理由は上記の通りですが、実はもう一つ理由があります。
「ブレーキを踏むように指導する理由は先輩にそう指導するように教えられたから。」
これは知り合いの教習所教官の証言です。
実は教習所では大昔の車を運転するための指導がいまだにいくつか残っています。
例えば「ハンドルは10時10分の位置を持つ」なんていうのは今でこそあまり聞かなくなりましたが、少なくとも10年ほど前はまだそういった指導が多く残っていて、それが当然とされていました。
パワステが一般的になってから30年近くが経っていたにも関わらず、です。
かつてはブレーキの過熱による性能低下を防ぐため、急ブレーキ時のロックを防ぐため、様々な理由で推奨されていたポンピングブレーキも、古い常識の一つです。
ポンピングブレーキは後続車への減速アピールのためとも言われることがありますが、今では後続車へのいやがらせと捉えられかねず、乗り心地も悪くなるといったデメリットの方が目立ちます。
各車のブレーキ性能が向上した現代においては後続車への合図という意味でのポンピングブレーキを使うメリットはかつてほどありません。
高速道路における渋滞の最後尾であればハザードランプを点灯させる方が一般的ですし。
もしあなたが教習所で「ポンピングブレーキを使わないといけない」と指導されたとしたら、その教習所で習った常識は全て疑った方が良いかもしれません。
話を戻しますが、昨今の車であればブレーキペダルを奥まで踏み込むことはさほど難しくありません。
というより、もしかすると「ブレーキペダルやアクセルペダルは昔の車ほど強く踏む必要がなくなった」と言った方が正しいのかも。
ただし、「どこまでブレーキを踏み込めばABSが効くほどの強いブレーキになるのか」は把握しておく必要があるため、教習所でも急制動(急ブレーキ)の体験があったはず。
・・・でもこれってかかとを床につけるかつけないかは関係ないんですよね。
「教習所で習ったからかかとを浮かせるのが正しい!」という主張は正論に聞こえますが、その考え方は少し危険でもあります。
大切なのは、ただただ鵜呑みにするのではなく「なぜそうすると安全につながるのか」をしっかりと理解しようとすること。
とはいえ、きっと自分で調べようとしてこの記事にたどり着いたあなたなら、かかとをつける派だろうが浮かせる派だろうが恐らく問題なく安全運転ができるでしょう。
実際、かかとをつけるかつけないかなんてことは大した問題ではなくて、もっと重要なことはいくつもあります。
念のため、最後に「安全運転のためにもっと気を付けたいこと」に触れてから終わりにしたいと思います。
かかとをつけるかつけないかより大切なこと
ブレーキを正確に操作できるかどうか、安全に減速できるかどうかを左右するのはかかとをつけるかつけないかだけではありません。
むしろこれは全体を見れば些細な問題と言えるのかもしれません。
まず、大前提としてペダルをしっかりと踏むこと。
ミスなくブレーキを操作するには指の付け根でブレーキペダルの芯を捉える必要があります。
ただし、これを優先すると足のサイズによってはかかとが床に届かない人もいるかもしれません。
そういう人は「かかとを床につけない方が良い」と言えるかもしれませんね。
また、車を正確に操作するためには正しいドライビングポジションである必要があります。
ドライビングポジションが正しく、身体がしっかりとシートに固定されていれば、かかとを浮かせた状態でブレーキを踏んでもそれなりに精密に操作することが可能です。
しかし、昨今ではドライビングポジションの重要性は軽視されがち。
MT車は左足でクラッチペダルを踏み込んだり左手でシフトノブを操作する必要があるため、ドライビングポジションが適切でないと運転しにくく感じますが、AT車はドライビングポジションが適当でも容易に運転できてしまいます。
日本国内においてはそれこそ40年近くも前からAT車が主流。
恐らく普段から適切なドライビングポジションを意識して運転している人の方が少数派でしょう。
そう考えると、「かかとを浮かせる派の人が本当に細やかなブレーキ操作ができているのかどうか」は少し心配になりますね。
実際はカックンブレーキだらけになっている人も多いのではないでしょうか。
カックンブレーキも乗り心地に目をつぶれば直ちに危険というわけではありませんが、うーん。。。
かかとを浮かせる派の人はせめて正しいドライビングポジションを意識して、ブレーキ操作の精度を上げたいところですね。
更に、そもそも安全に減速をするうえでもっとも大切なのが、適切な車間距離を取るということ。
車間距離が十分に保たれていれば、多少ブレーキの効きが悪くても、万が一反応が遅くても、大きな事故につながるリスクは大幅に軽減されます。
見方を変えれば緩やかに減速するための余裕を持てるわけで、加えて視界も確保でき、2台、3台前方の様子もわかりやすくなるので一石二鳥ですね。
アクセルオフによるエンジンブレーキを意識することも安全につながります。
昨今の車はエコ指向でエンジンブレーキの効きが悪くなっていますが、エンジンブレーキによる減速に慣れると、自然と早めの減速や車間距離を取るクセがつきます。
最終的にはフットブレーキがいざというときに急減速するための切り札のように感じられるようになり、こうなるとかなりゆとりをもった運転ができている状態と言えます。
ちなみに、下記のトヨタの公式ページでもかかとを床につけた操作が基本とされています。
トヨタが言うくらいですから、車自体がこれを前提に設計されている可能性すらあります。
また、ドライビングシューズの形状からも、運転するうえでのかかとの重要性が見て取れますね。
とはいえ、かかとを浮かせる浮かせないは、既に安全に運転ができているのであればどちらでも構わないと思います。
よほど苦手意識がない限りはわざわざ慣れた操作方法を変える必要はないと思いますし、まずは正しい乗車姿勢と車間距離、ゆとりを持った運転を意識して、安全な運転を心がけたいですね。