MT車の減速方法。フットブレーキのみ、エンブレのみは危険なのか。

MT車の減速方法。フットブレーキのみ、エンブレのみは危険なのか。 ブレーキング

MT車に乗っているそこのあなた。

普段どのような方法で車を減速させていますか?

「フットブレーキ」を多用するのか、「エンジンブレーキ」を多用するのか、街乗りにおける一般的かつ実用的な車の減速方法は主にこの2つですが、シーンごとに適切な選択ができているでしょうか。

特に自由にギアを選択できるMT車はエンジンブレーキの恩恵を受けやすいため、「エンジンブレーキを積極的に使用する」という選択肢がクローズアップされやすいと言えます。

しかし、実際は次のように、「どのような減速をしたいか」によって適切な減速方法は変わってきます。

  1. ほんの少しだけ減速したい場合
  2. 緩やかに減速したい場合
  3. 急激に減速したい場合

そこで、今回はこれら3パターンにおける適切な減速方法を考察してみました。

是非あなたの普段の運転と照らし合わせてみてください。

 

MT車の減速 その1.ほんの少しだけ減速したい場合

まずは“ほんの少しだけ”減速したい場合を考えてみましょう。

例えば、前走車との車間が詰まってしまった場合など。

高速道路等を走っているとよくあることですが、このようなシーンではアクセルを離すだけで十分なことが多いですね。

アクセルを離せば適度にエンジンブレーキが働き、わずかに減速します。

逆に、ほんの少しだけ減速したい場面でフットブレーキを用いるのは、あまりスマートとは言えません。

もちろん、フットブレーキでも「ほんの少しの減速」ができないというわけではありませんが、推奨しない理由が2つあります。

 

1つ目の理由は、「ブレーキランプが点灯してしまうから」

通常ならブレーキランプが点灯すること自体は安全方向で悪いことではないのですが、ほんの少しだけしか減速しない場合、特に高速道路などにおけるブレーキランプはあまり良いものではありません。

なぜなら、ブレーキランプは後続車のブレーキを誘発してしまうからです。

そして後続車のブレーキランプを見て更に後ろにいる車がブレーキを踏み・・・。

後続車は前走者がブレーキを解除したのを確認してから自分もブレーキを解除して再加速しますから、これを繰り返すと後続は徐々にブレーキを踏む時間が長くなり、最終的には停車してしまいます。

これは渋滞発生のメカニズムのうちの一つと言われていますね。

高速道路においてフットブレーキを多用してしまう人は、正直あまり運転がうまいとは言えません。

心当たりがある人は気を付けてくださいね。

 

2つ目の理由は、「燃費が悪化するから」

これについては後程詳しく解説します。

 

ほんの少し減速をしたいときは「アクセルを離す」こと。
その結果適度なエンジンブレーキが効き、スピード調整が容易になります。
高速道路におけるフットブレーキは極力避けるように!

 

MT車の減速 その2.緩やかに減速したい場合

お次はもう少ししっかりと減速するシーンを考えてみましょう。

例えば赤信号の交差点への接近時など、停止に向けた減速が必要な場面など。

ここでもやはりエンジンブレーキが有効です。

ただし、先ほどの「ほんの少しの減速」とは異なり、やや強いエンジンブレーキが必要になります。

具体的には減速(速度の低下)に対して早めにシフトダウンをすればOK。

ただし、シフトダウンをする際はクラッチに負担がかからないように注意が必要。

エンジンブレーキによる積極的な減速を多用する場合は、ブリッピングを用いたスムーズなシフトダウンをマスターしておく必要があります。

詳しくはこちら↓

ヒールアンドトウの基本技術!ブリッピングの必要性と注意点!
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今度はフットブレーキを用いて緩やかに減速する場合を考えてみましょう。

教習所では「減速=フットブレーキ」のように習うのが一般的かもしれませんね。

実際はフットブレーキだけで減速しているつもりでも、クラッチを切らない限りはエンジンブレーキが効いている可能性がありますが。

もちろん、フットブレーキを用いて減速するのもOKです。

ただし、やはりエンジンブレーキを有効活用した場合と比べて燃費は悪化しますし、フットブレーキを多用すればそれだけブレーキパッドの減りも早くなります。

あまりエコではありませんね。

ただし、もしシフトダウンの際に半クラッチを多用するくらいであれば、素直にフットブレーキだけで減速した方が車への負担は小さいと言えます。

まずは先述の通り、ブリッピングを用いたシフトダウンをマスターしたいところですね。

 

余裕をもって減速することが可能なシーンにおいては、まずエンジンブレーキで適度に車速を落とし、最終的にフットブレーキを追加して停止するという減速方法がおすすめです。
まずはスムーズなシフトダウンをマスターすること!

減速が不十分になったり、エンジンブレーキだけで急減速となったりしないよう、前後との車間や停止位置までの距離にも注意しましょう。

 

クラッチを切ってフットブレーキだけで減速するのはアリ?ナシ?

ここでは「クラッチを完全に切った状態でフットブレーキだけで減速した場合」について考えてみます。

結論から言えば、この方法でも大きな問題はありません。

現代のブレーキは「運転の常識」が作られた時代よりはるかに進化しており、その制動力は非常に優秀です。

特にディスクブレーキの制動力は数十年前のものと比べると天と地ほどの差があり、かつての常識は今や通用しないんですよね(加えてタイヤの進化も大きく貢献しています)。

現代のフットブレーキの性能から見たら、エンジンブレーキの制動力なんて誤差の範囲内と言っても過言ではありません。

特に最近の車は燃費を稼ぐためにエンジンブレーキの効きが弱められていることもあるため、フットブレーキとの制動力の差は更に顕著です。

「制動力」という観点から見ればフットブレーキのみで減速しても何の問題もありません。あとは、何度も言うように燃費やブレーキパッドの減りを許容できるかどうか。

 

エンジンブレーキだけで停止寸前まで減速するのはアリ?ナシ?

確かに現代のフットブレーキと比べるとエンジンブレーキによる減速は軽微なものですが、それでも仮に50km/h以上で2速や1速に入れたら、どんな車だってそれなりの制動力を得ることができます。

フットブレーキとは比ぶべくもないですが、要は使い方ですね。

実際、エンジンブレーキだけでも停止寸前まで車速を落とすことは十分に可能です(車種によってはそこそこ距離が必要になりますが)。

そのためにはスムーズなシフトダウンが必須となるわけですが、フットブレーキを使わずにブリッピングを駆使して行うシフトダウンは、ヒール&トウの練習方法としても優秀です。

個人的にはこの方法はかなり好きですね。

次の信号が赤なのが見えていれば、交差点に向かってゆっくりと減速して、あわよくば信号が青になった瞬間に交差点に到達するのが理想なわけで、その際の緩やかな減速テクニック・速度調整テクニックとして、エンジンブレーキは大変有効と言えます。

もちろん、最終的に完全に停車する際はフットブレーキを用いる必要があります。

 

エンジンブレーキのみでの減速に関して話題になりがちなのが「ブレーキペダルを使わないとブレーキランプが点灯しない問題」

要するに、「後続車へ減速の意志を伝えることができない」ということですね。

そのため、後続車が車間を詰めている場合は急激なエンジンブレーキはご法度です。

とはいえ、実際は車間が詰まっているほど後続車も前走車の動きに注意しますし、緩やかな減速であれば極端に神経質になる必要はありません。

実は本当に気をつけたいのは後続車との車間がある場合で、後続車がスピードを上げて接近しているにも関わらずエンジンブレーキで減速していると、あっという間に車間が縮まってしまうことがあります。

この場合、後続車が前走車(あなた)との車間にまだ余裕があると思っている点が落とし穴。

速度差があるのは危険なんですよね。

そのため、シフトダウンで減速する前にちょこんとフットブレーキを踏んでブレーキランプを点灯させるなどし、後続車に「あれ?なんか変だな」と思わせる・警戒させることが重要です。

エンジンブレーキを用いた減速、速度調整はとても便利。
街中では後続車に配慮する必要はあるものの、車間の離れた車の速度まで気を配れるようになれば、シフトダウンによるエンジンブレーキで減速を試みても危険はほとんどないと言って良い・・・
のではないでしょうか(ボソ

 

MT車の減速 その3.急激に減速したい場合

教習所では少しでも制動距離を短くするため、クラッチを踏み込まずにブレーキだけを踏み込むように指導された人がほとんどだと思います。

この場合、当然停止した際はエンストしますが、「停止する直前までエンジンブレーキによる制動力が得られる」はずですよね。

実際、クラッチを踏み込めばエンジンブレーキは全くかからなくなりますから、その分制動距離は伸びてしまうと考えて間違いないでしょう。

 

しかし、現実は理想と異なり、いくつか問題があります。

まず、効果的なエンジンブレーキを得るには、先述の通り速度に対して低めのギアにシフトチェンジしておく必要があるということ。

例えば1速のまま40km/hまで加速をして、そのまま急ブレーキをかけるのであれば、当然クラッチを踏まない方が早く止まれるでしょう。

しかし、街中でスムーズに走っていれば、多くの車は40km/h付近では3速か4速を選択して走っているはずです。

仮に4速に入っていた場合、先の1速のような急激なエンジンブレーキを得ることはできません。

それどころか、フットブレーキによって車速が30km/h、20km/hと落ちてしまえば、4速がもたらすエンジンブレーキなどあってないようなもの。

クラッチを切っているのと大差ありません。

急ブレーキ時にエンジンブレーキがもたらす制動力なんて、現代のフットブレーキの性能から見たらほんの些細なものです。

 

もう一つの問題が、回転数が落ち込んだときにコンピュータがエンストを回避するために燃料を供給する可能性があるという点。

特に最近の車はこういった機能が豊富な印象を受けます。

車種によっては急ブレーキを察知して燃料を供給しない可能性もあるかもしれませんが、下手するとこのコンピュータの動作は減速の邪魔をします。

 

恐らく、普段MT車に乗り慣れている人は、とっさの際も停止直前でクラッチを踏み込んでエンストを回避するでしょう。

これがそんなに悪いこととはどうしても思えません。

「急ブレーキの際はクラッチを踏み込んではいけない!」なんて一瞬頭をよぎっただけで初動が遅れる可能性すらあります。

「危ないと感じたらとにかくブレーキペダルを踏み込む!」

これだけ覚えておけばOKなのでは。

細かいことを考えて初動が遅れては本末転倒!
今のフットブレーキの制動力はエンジンブレーキの比にならないくらい強力なので、クラッチペダルどうこうよりも、とにかく「いかにブレーキを踏み込めるか」の方が大切。

 

急ブレーキの際にシフトダウンはするべき?

結論から言うと、急ブレーキが必要なシーンではシフトダウンは“しない方が良い”です。

なぜなら、ヒール&トウの際にブレーキングが不十分になったり、シフトミスをする可能性があるから。

間違ってシフトロックなんか起こしてしまったら最悪ですよね。

 

さらに「低速における低回転域でのヒール&トウが意外と難しい」という問題もあります。

実際にやってみるとわかりますが、スポーツ走行のような高い回転数を維持して走る場合と比べて、街中のような低い回転数を使って走るケースでは、“回転数を合わせる”際の難易度が違います。

極端な例ですが、時速20km/h付近における2速→1速へのショックレスなシフトダウンなんて、めちゃくちゃ高い精度が要求されます。

それだけ低速・低回転における急ブレーキ時のシフトダウンは“リスキー”だということです。

 

確かにエンジンブレーキを効果的に効かせることができれば、制動距離が縮まる可能性はあります。

ところが、今やレーシングシーンにおけるヒール&トウですら、減速のためではなく立ち上がりの加速のために行われる時代。

何度も言いますが、それだけフットブレーキの性能が進化しているわけです。

エンジンブレーキによる更なる減速を求めるのは“超ハイリスク・超ローリターン”と言って良いでしょう。

 

街中の速度域においては、特にフライホイールが重いなどの理由でエンジンの吹け上りが悪い車の場合、回転数を合わせる前(シフトダウンする前)にすでにフットブレーキだけで停止している可能性もあります。

落ち着いて、フットブレーキに全神経を集中させた方が無難ですね。

いくらレースシーンに慣れている熟練のドライバーでも、街中で咄嗟にフルブレーキが必要になった際は身体が硬直してしまうもの。
余計なことは考えず、リスキーな操作はせず、まずは確実にフットブレーキを踏み込むことを意識しましょう。

 

停止するときはどこからクラッチを踏み込めばいいの?

これは特に初心者が悩みやすいポイントと言えるかもしれません。

「教習所で早めにクラッチを切ったら注意された」という人もいるかもしれませんが、結論から言うと、クラッチは早めに切ってしまっても問題ありません。

先の急激な減速の項でもお伝えした通り、今やフットブレーキの性能は劇的に進化しており、制動力だけを見ればエンジンブレーキを“併用”するメリットがほとんどないからです。

 

それどころか、「ギリギリまでクラッチを踏み込まないことによるデメリット」の方が目立ちます。

例えばフットブレーキにより車速が落ちると、連動して回転数も落ち込みますよね。

回転数が落ち込めば当然エンストする可能性が出てきますし、エンストまでいかなくてもノッキングが生じれば、やはりエンジンにとってあまり良いことではありません。

また先ほども少しふれましたが、このように回転数が落ち込んだとき、比較的新しい車ではエンスト回避のためにコンピュータが自動で燃料を供給してエンストやノッキングを回避してくれるのですが、実はこれが厄介。

停止寸前まで減速して回転数が落ち込み、ブレーキの踏力が弱まったとき、燃料が自動で供給されることで車が「ふわっ」と加速するように感じられることがあります。

これは意図していない動きとなりやすく、慣れないと結構怖いんですよね。

さすがにこれはブレーキが弱すぎる上にクラッチを踏むのを我慢しすぎですが、こうなる可能性を残すくらいならクラッチは早めに切っておいた方がマシです。

クラッチは早めに切って構わない。
特に最近の車は操作性を重視するために意図しない挙動を示す場合があるので、機械的に動力をカットした方が安心できるケースもある。

 

フットブレーキとエンジンブレーキによる燃費への影響の違い

フットブレーキによる減速を多用した走りとエンジンブレーキによる減速を多用した走りで大きく異なってくるのが「燃費」です。

結論から言うと、エンジンブレーキを有効活用した方が断然燃費は良くなります。

 

まずはフットブレーキで減速した場合。

車種や選択しているギアにもよりますが、ブレーキを踏むとエンストを回避するためにコンピュータが勝手に燃料を噴射する場合があります。

このときの燃料は前に進むための消費ではないため、結果的に無駄になってしまいますよね。

そもそも、フットブレーキ(ディスクブレーキ・ドラムブレーキ)は運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで減速する装置です。

もう少しわかりやすく言うと、「燃料を消費して得たスピードを熱に変換して捨てる装置」ということです。

ただ捨てるだけですから、無駄が多いんですよね。

 

一方エンジンブレーキはどうでしょうか。

減速することには変わりないため、「スピードを捨てる」という点では共通していますが、その手段が異なります。

エンジンブレーキによる減速の際は、スピードを「タダでは捨てない」んですよね。

エンジンブレーキのカラクリは「エンジンが回転する際の抵抗を利用してタイヤ側の回転を減衰させる」というもの。

このとき、エンジンはタイヤ側の回転で無理やり回される形となるため、燃料を必要としません。

先ほどとは逆に、コンピュータにより燃料はカットされるのです(エンジンブレーキによる燃料カット)。

正反対ですね。

 

ただし、選択しているギアに対して車速が落ちすぎると、当然回転数も落ち込み、やはりエンストを回避するためにコンピュータが自動で燃料を供給する場合があります。

また、アクセルオフで燃費を稼ぐには、それなりにエンジンブレーキを効かせてしっかりと“燃料カット”をさせることがポイントとなります。

エンジンブレーキを用いた方が「燃料カット」によって燃費を向上させやすい。
ただし、エンジンブレーキに頼りすぎて減速がおろそかになったり、極低速で不安定な挙動とならないように配慮が必要。

 

まとめ│場面場面で最適な減速方法は異なる。

何度も触れてきましたが、今の車はフットブレーキの性能が高く、「エンジンブレーキに頼らないといけない」なんていう場面はほとんどありません。

制動力だけを重視するならフットブレーキだけで十分。

逆にブレーキパッドを労わったり燃費を向上させたいならエンジンブレーキを有効活用したいところですが、シフトダウンに半クラッチを多用するくらいなら素直にクラッチは踏み込むべきです。

まずはスムーズなシフトダウンを覚えることが、MT車の減速における第一歩と言えます。

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エンジンブレーキの更なる恩恵についてはこちらの記事↓にもまとめていますので、よければ覗いてみてください♪

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