スポーツ走行をする人たちの間でいまだに根強い人気を誇るMT車。
しかしMT車を乗っている人の中で、正しくヒールアンドトウを実践できている人はどの程度いるでしょうか。
MT車に乗る理由は人それぞれですが、少しでもスポーツ走行をしたいのであればヒールアンドトウの習得は必須です。
スポーツ走行をするうえでは速く走るためにも、安全に走るためにも、確実に覚えておかなければいけないテクニックと言えます。
さて、今回は実践編として、実際にどういった手順で操作するのか、どんな点に気を付ければいいのか、具体的な練習方法を踏まえてまとめていきたいと思います。
なお、「ヒールアンドトウがどういうものか」については下記の記事で説明しています。
先に読んでいただいた方が、より理解を深めていただけるはず。
ヒールアンドトウの操作方法、手順
では実際の流れを確認してみましょう。
グラフ1.エンジン回転数と車速
前回と同様、サンプル車両は180SX。
車速が100km/hのときの回転数は、2速で6,500rpm、3速で4,500rpmです。
この場合の3速から2速へのシフトダウンで考えてみたいと思います。
手順1.ブレーキを踏む
まずスポーツ走行中にシフトダウンをしようと思ったら、事前に十分に減速する必要があります。
なぜなら高い回転数で走っていた場合、シフトダウンをした瞬間にレッドゾーンに突入、なんてことにもなりかねないからです(逆に言えば、シフトダウンでレッドゾーンに突入するようであれば、そのコーナーではシフトダウンは不要です)。
このとき、ブレーキは親指の付け根から指の腹あたりを使って力強く押し込むように踏みましょう。
注意したいのは、ここから先、ブレーキを踏む力を弱めてはいけないということです。
踏力が弱まると制動距離が伸びるばかりでなく、車の挙動が不安定になり、スムーズな動作ができなくなってしまいます。
ブレーキを踏む力を一定に保ちながら以下の操作をするのがヒールアンドトウの“キモ”と言えます。
手順2.クラッチを切る
100km/h(4,500rpm)までスピードを落としたら、まずはクラッチを切り(踏み)ます。
(100km/hは今回説明を簡略化するために定めたスピードであり、実際はどのスピードでシフトダウンする場合も基本的な操作に変わりはありません。)
ここまでは特別な操作はありませんね。
手順3.回転数を合わせる
クラッチを切ったらシフトノブを3速→2速と移動させながら、すかさず右足のかかと(又は側面)でアクセルを少しだけ踏み、回転数を上げます。
このとき、ブレーキは右足のつま先で踏んだまま。
次に入れたいギアは2速ですので、時速100km/hのときの2速の回転数、6,500rpmを目指してアクセルをあおりましょう。
このアクセルをあおる行為は“ブリッピング”と呼ばれます。
ブリッピングの必要性や注意点などをもっと詳しく知りたい方はこちらもどうぞ↓
手順4.クラッチを繋ぐ
シフトノブが2速に入った状態で回転数を6,500rpmまであおれたら、あとはクラッチをつなぐ(離す)だけです。
回転数が合っていれば、一切のショックを感じることなくシフトダウンをすることができます。
回転数を上げてからクラッチをつなぐまでに時間がかかると、また自然と回転数が下がってしまいますので、アクセルをあおるのとクラッチをつなぐのはほぼ同時と覚えておきましょう(スロットルレスポンスの悪い低燃費仕様車は除く)。
以上がヒールアンドトウの操作の流れです。
ヒールアンドトウの練習方法
文字で十分理解したつもりになっても、実際にやってみると難しいのがヒールアンドトウの困ったところ。
ここで脱落してしまう人が多く、「なんちゃって走り屋」が量産されていくのでしょうね。
しかしそうならないためにも、この記事を見た人は見ない人よりも有利になる、そんなポイントを紹介してみたいと思います。
1.まずは原理を理解するのが早道
ヒールアンドトウの最大のポイントは「回転数を合わせる」ということ、これに尽きます。
これが理解できていれば、アクセルをあおってからクラッチをつなぐまでをスピーディーにするということの大切さも理解できるはずです。
更に言えば、ここさえ意識して回転数を合わせることができれば、完成度はさておき、とりあえずの形はできたと言えるでしょう。
ブレーキを踏む力を意識したり、全体的に所要時間を減らしたりといった作業には、ここまでできてから初めて取り掛かれば良いのです。
最悪、必要以上に回転数をあおり、回転数が落ちてきたところを狙ってクラッチをつなぐという手もあります。
正しいやり方ではなく常用もおすすめしませんが、回転数を合わせたときの感覚はつかめるでしょう。
楽器を弾く人は似た経験があるのではないかと思いますが、一気にすべてを完璧にしようとするのではなく、まずはゆっくりやってみることで各フレーズを、次に全体の流れや身体の動かし方を覚え、更に徐々にペースアップをしていくというのが、長い目で見ると実は早道だったりします。
すぐにできるなどとは思わず、焦らないことが大切です。
もっと詳しく知りたい人はこちらもどうぞ↓
2.ブレーキを使わずに回転数を合わせてシフトダウンする
ここで紹介するのはより具体的な練習方法です。
管理人が免許を取り立ての頃、上記の原理を理解してこの方法にたどり着き、この方法で回転数を合わせる感覚を覚えました。
今でも赤信号が見えたら同じ方法でシフトダウンして減速することがあります。
(ブレーキランプが点灯しない減速方法なので車通りが多いときはおすすめしませんが)
それでは実際にどういう手順か見ていきましょう。
まずは減速したいと思ったらアクセルを離し、クラッチを切ります。
ここで車はニュートラルの空走状態に入りますね。
あとは任意のギアにシフトノブを入れ、右足でアクセルをあおり、クラッチをつなぐだけです。
このとき右足はかかとだったり側面である必要はありません。
つま先や指の付け根あたりでOKです。
たったこれだけです。
どうです?簡単でしょう?
やっているうちにニュートラルの空走時間を徐々に短くできるようになるはずです。
空走時間が短いということは回転数を合わせるスピード、回転数が合ってからクラッチをつなぐまでのスピードが向上しているということですね。
ブレーキを踏まない分、クラッチをつなぐまではほとんど速度変化が起こりませんので、公道で練習するにもうってつけの方法です(もちろん安全には十分配慮してくださいね)。
この方法で「アクセルをあおって回転数を合わせる」という感覚に慣れたら、あとはこれをブレーキを踏みながらやるだけです。
実はブレーキを使わないでシフトチェンジするというこの方法は一つのテクニックでもあり、追い越しの際など、ギアを落として急加速したいときにも流用できます。
先述のブリッピングを利用していることから「ブリッピングシフトダウン」と言われることもあります。
まとめ│ヒールアンドトウをマスターするために大切なポイント
さて、今回は具体的にヒールアンドトウの実践方法をまとめてみました。
大切なポイントをまとめると次の3つでしょうか。
- アクセルをあおったら素早くクラッチをつなぐこと
- アクセルをあおって回転数を合わせるという感覚に慣れること
- ブレーキを一定の踏力で踏み続けること
特に回転数が合うという感覚が一度でもつかめれば、あとはあっという間に取得できると思います。
そういう意味で、ブレーキなしのシフトダウンは本当におすすめです。
更にもう一つ付け足すとすれば、エンジンの音に耳を澄ますことです。
シフトチェンジは手や目で覚えるのではなく、耳で覚えましょう(管理人は初めて運転するMT車ではオーディオは必ず消してエンジン音に集中します)。
ヒールアンドトウを取得すると、まるでゲームのように自由なギアを選択して走ることができるようになりますので、スポーツ走行の幅が広がります。
MT車に乗ってる方は是非頑張って習得してください♪