みなさん、“パドルシフト”って使ったことありますか?
「自分の車にもあるけどほとんど使わない」という人が多いのではないでしょうか。
一昔前はスーパーカーをはじめとする“スポーティーなAT車”についているイメージの強かったパドルシフト。
ですが、最近は「ホンダ N-BOX」のような軽ハイトールワゴンにまで搭載されています。
どう考えてもスポーティーな走りをするイメージはないのにどうしてついているのか、きっと不思議に思う人も多いですよね。
実はこのパドルシフト、シフト操作が簡単になるだけでなく、有効活用すると車の消耗を抑えたり燃費を向上させる効果が見込めるのです!
今回はどんな場面で、どのように使うと効果的なのか、そのあたりを簡単にまとめてみました。
パドルシフトとは?
パドルシフトとは、簡単に言えばハンドルから手を離すことなくシフト操作(ギアチェンジ)が可能となる装置です。
装置と言うと大げさですが、実際に操作するのはハンドルの裏にあるレバーのみ。
パドルシフトの使い方は簡単で、ハンドルがまっすぐの状態で左側にくるレバーを引くとシフトダウン、右側のレバーを引くとシフトアップします。
初めて市販車に搭載されたのはフェラーリF355の1997年式。
この時搭載されたパドルシフトを伴うセミオートマチックトランスミッション「F1マチック」は、フェラーリ640(1989)をはじめとするF1マシンからのフィードバックでした。
つまり、もともとは速さを追求する過程で誕生した装備なのです。
そんな経緯を持つパドルシフトは、初期はスーパーカーやスポーツカーにのみ搭載されるちょっと特殊な装備だったのですが・・・。
一口にパドルシフトと言っても、MT車をベースにしたもの、トルコン車(一般的なAT)をベースにしたもの、CVT車をベースにしたものでそれぞれ仕組みが異なります。
先のF1マチックはMT車をベースとしたシステムで、パドルシフトから得た電気信号をもとにクラッチを自動制御し、素早くダイレクトなシフトチェンジを可能としています。
ところが、現在市販車に搭載されるほとんどのパドルシフトはトルコンATかCVTをもとにしたもの。
これらは本来自動で行われる変速のタイミングを自分で指定できるものの、特にトルコンATベースの場合は変速の速度はあまり期待できません。
このため、パドルシフトを使ってスポーツ走行をしようと思ってもなかなか思い通りのタイミングで変速できず、結局「D」に入れっぱなしの方が速いなんてことも。
こう聞くと、パドルシフトのことを「AT車でも手軽にスポーツ走行を楽しめる装備」と認識していた人は首をかしげてしまうかもしれませんね。
実施に今ではスポーツカーに限らず多くの車種に採用されているパドルシフトですが、スポーツ走行において大きなメリットがないとすると、いったい何のためについているのでしょうか。
続いてパドルシフトを使用するメリットを確認してみましょう。
パドルシフトを使用するメリット
パドルシフトを使用することによるメリットは次の通り。
- ハンドルから手を離さずにシフト操作ができる
- 素早いシフトチェンジが可能
- スポーツ走行気分を味わえる
- エンジンブレーキを有効活用できる
- 早めのシフトアップでエコドライブができる
- キックダウンより緩やかに十分な加速を得ることができる
1~3はパドルシフトの操作性に関するメリット、4~6はパドルシフトを用いた“積極的なシフトチェンジ”によって得られる副次的なメリットです。
1.ハンドルから手を離さずにシフト操作ができる
最大のメリットはこれでしょう。
パドルシフトがあればわざわざ片手をシフトノブまで動かす必要はありません。
その分素早い操作が可能ですし、両手でしっかりとハンドルを保持したままシフトチェンジすることが可能です。
これはスポーツ走行などにおいて強いGがかかる中でシフト操作する必要性が生じた場合にも大きなメリットとなります。
2.素早いシフトチェンジが可能
片手をシフトノブまで動かさなくて良い分、またシフトノブをガチャガチャと動かさなくてもいい分、シフトチェンジにかかる時間を短縮することが可能です。
また、シフトダウンにおいては通常ヒールアンドトウを用いて行う“ブリッピング”も自動で素早く行われるため、その分の短縮も可能です。
ただし、このメリットはMTをベースとしたパドルシフトに限定されます。
先にも述べましたが、ATをベースとしたパドルシフトはレスポンスが悪く、このメリットはないものと考えた方が良いです。
3.スポーツ走行気分を味わえる
一部の人にとってはシフトチェンジが早いかどうかは重要ではないかもしれません。
とにかく自分で選んだギアで走ることができるため、Dレンジに入れっぱなしにするよりもスポーツ走行気分を味わうことは可能です。
例えば通常のATならアクセルを踏み込まないと回転数が上がらずにすぐにシフトアップしてしまうところを、パドルシフトを用いればシフトを固定したり、敢えてシフトダウンすることで鋭い加速を得ることができるわけです。
エンジンブレーキを効かせながらカーブを曲がれば、車体が安定する上に脱出時のレスポンス(加速)も良くなるため、それだけでスポーティーな気分を味わうことができます。
スポーツモード付きのシフトノブでも同じことができますが、パドルシフトの方がF1みたいでスポーティーですよね。
4.エンジンブレーキを有効活用できる
パドルシフトを使えば気軽にシフトダウンをすることができますが、シフトダウンをするとどんな効果が得られるのでしょうか。
その最大の効果と言えば、より強いエンジンブレーキを効かせられることでしょう。
実はエンジンブレーキを有効活用すると運転がスムーズになったり、燃費の改善やパーツの消耗を軽減することができます。
詳しくはこちら↓
5.早めのシフトアップでエコドライブができる
パドルシフトによって可能な操作はシフトダウンだけではありません。
場合によってはわざと早めにシフトアップをすることで回転数を抑えて走ることも可能です。
加速時であれば、回転数が低いということはその分燃料を消費していないということです。
その代わりに低回転域では出力やトルクも低減する傾向にあるため、回転数は低ければ低いほど良いというわけではありませんが・・・。
加速を続けるシチュエーションでは昨今の優秀なコンピュータが最適なギアを選んでくれるため、その恩恵は微々たるものと言えるかもしれませんが、リフトアンドコースト(アクセルをオフして惰性で進むこと)に移行する際に素早くシフトアップすれば燃費を稼ぐことが可能です。
場合によってはしっかりとエンジンブレーキを効かせた方が燃料カットによって燃費が向上する場合もありますから、この辺りはケースバイケースですね。
瞬間燃費計が搭載された車であれば、いろいろと試してみるのもおもしろいかもしれません。
6.キックダウンより緩やかに十分な加速を得ることができる
高速道路の合流などで良く使われる“キックダウン”。
AT車において、アクセルを踏み込むことで自動的にシフトダウンし、急激な加速が得られるテクニックです。
このキックダウン、アクセルを踏み込むだけなので操作は至極簡単なのですが、いかんせん急加速過ぎると感じたことはありませんか?
ドライバーはそのタイミングがわかるからまだ良いかもしれませんが、同乗者はうなるエンジン音と急加速のショックに驚いてしまうかも・・・。
これから高速道路に合流するとわかっているようなシーンでは、もっと手前から緩やかに加速したいところですよね。
そのためには、予め低いギアを選択して走ればOK。
キックダウンが必要になるのは、合流区間に入る際に高いギアに入ってしまっていて加速が足りなくなるせいです。
ところが予め低いギアで走っていれば少し踏み足すだけで十分な加速が得られますから、急な加速ショックがないまま自然な加速で本線に合流することが可能です。
こういったシーンでも、アクセルとシフトダウンを別々に操作できるパドルシフトは有用と言えます。
(シフトノブでも同じことが可能ですが、加速後のシフトアップも含めて操作がより楽ですね)
パドルシフトを使用するデメリット
使用すること自体に大きなデメリットはありません。
強いて挙げるなら、パドルシフトを操作してから実際にシフトダウンするまでのタイムラグを考慮しないと危険なケースがあり得るということ。
先ほども少し触れましたが、ATベースのパドルシフトは反応が悪いことがほとんどです。
特にトルコンATベースの場合、シフトチェンジ中はニュートラルと同じ状態のため、変速が終わるまでエンジンブレーキが一切効かなくなります。
そのため、エンジンブレーキで減速しようとパドルシフトで操作しても、思いのほか空走距離が伸びてしまい、結果十分な減速ができないという事態も考えられます
もちろん十分な車間距離を維持していれば通常は問題ありませんが、とっさの際はしっかりとブレーキを使えるように意識しておくことも大切です。
CVTは変速時も駆動力が途切れることがないため、反応の悪さはそこまで気にならないかもしれません。
ただしCVTは大出力に弱いため、高速域において一気にレッドゾーンぎりぎりまで回転数が上がるような極端なシフトダウンは避けた方が無難です。
あとがき
パドルシフトのメリットをもっと簡単にまとめれば、「シフト操作が簡単なこと」と、それゆえ「シフト操作によるメリットを手軽に得られること」と言えます。
特にエンジンブレーキの有効活用を意識すれば、スポーツ走行とは真逆のエコ運転にも活かすことができます。
是非参考にしてみてください。