ダウンフォースという言葉を聞いたことはありますか?
スポーツ走行に興味があったりレース観戦が好きな人なら頻繁に耳にする単語ではないでしょうか。
このダウンフォース、効果を得ることができれば驚くほどコーナリング速度を上げることができます。
現代のレース界では決して無視することができないダウンフォース。
少しお勉強してみましょう♪
ダウンフォースに関するあれこれ
今やハイレベルなレースでは「なくてはならない存在」、それがダウンフォースです。
ダウンフォースとは、その名の通り車を路面に押し付ける向き(下向き)の力を言います。
「ダウンフォースの恩恵とは?」
「どうしたらダウンフォースを得ることができるの?」
「ダウンフォースについて気をつけたいことはあるの?」
こういった点を中心にまとめています。
ダウンフォースの恩恵
ダウンフォース、つまり車を路面に押し付けることによって得られる恩恵について考えてみましょう。
車を地面に押し付けるということは、つまりタイヤを路面に押し付けるということです。
ということはつまり・・・?
グリップの増加
そう、タイヤを路面に押し付ければ、それだけ高いグリップ力を発揮することができます。
そうなれば高いトラクションを得ることが可能になり、ハイパワーなエンジンを積んでもタイヤの空転を抑制することができます。
またコーナリングにおいても限界が高くなり、より高い速度でコーナーを抜けることが可能になります。
ところで、「タイヤを路面に押し付けるだけなら車を重くすれば良いのでは?」と感じる人もいるかもしれませんね。
しかし、車重によってタイヤを路面に押し付けた場合、車重の増加によって車に働く慣性も大きくなり、その分減速のためにより強い力が必要になってしまうことがデメリットとして現れます。
コーナリング中の遠心力も車重に比例して大きくなりますので、その分コーナリング速度を落とすか、より強いグリップを消費することになります。
その点、ダウンフォースでグリップを確保すれば車重はほぼそのままで済みます。
つまり、加減速に必要な力やコーナリング時に生じる遠心力をそのままに、単にグリップだけを向上させ、マシンの限界を上げることができるわけです。
この「慣性に影響を受けることなくグリップを強化できる」という特徴が、ダウンフォース最大の利点と言えるでしょう。
超軽量なレーシングカーで超高速のコーナリングを実現するには、ダウンフォースはなくてはならないものなのです。
ちなみに、FF車におけるリアウイングはトラクションへの影響はあまりありませんが、車体を安定させるという意味では有用です。
整流効果
簡単に言うと、空気の流れを整えることでメリットを得ることができるということです。
これはダウンフォースによる恩恵ではなく、ダウンフォースを得るためにボディワークやエアロパーツを工夫することで生じる副産物と言った方が正しいかもしれません。
実はダウンフォースの恩恵が少ない速度域でも、整流効果に関しては燃費面などで大きな効果が得られることが多いです。
これについては別途記事にする予定です。
→【車の周りの空気を整流させて燃費性能と走行性能を向上させよう!】
ダウンフォースを得るには
ダウンフォースを得る方法は大きく分けると2つあります。
一つは車体形状やウイングなどを用い、車体上面でダウンフォースを得る方法。
もう一つは車体底面を流れる空気を整流し、いわゆるグランドエフェクトと呼ばれるダウンフォースを得る方法です。
一つずつ見ていきましょう。
車体上面を活用したダウンフォース
主にカナード、フロントウイング、リアウイングなどのエアロパーツを用いて、空気抵抗によって物理的に、またはウイングの上下を流れる空気の速度差によって生じる圧力差によってダウンフォースを得ます。
簡単に言えば、飛行機の翼を上下逆さまにしたような形のウイングを用います。
こうすることでウイング下面の圧力が低下し、ダウンフォースが発生します。
市販車でもGTウイングなどの後付けパーツを入手しやすい点、カスタム(セッティング)が容易な点が、車体上面のダウンフォースのメリットでもあります。
車体底面を活用したダウンフォース
いわゆる「グランドエフェクト」と呼ばれるダウンフォースがこれにあたります。
車体底面を平らにしたり、1本から数本の縦の溝を設けることで空気の流れを整え、車体後方に配したディフューザーなどで空気を素早く排出させることで、車体と路面の間の空気の流速を上げ、それによって生じる負圧でダウンフォースを得ます。
これは「流体の流速が増すことで圧力が下がる」というベンチュリー効果(ベルヌーイの定理の応用)を利用しています。
つまり、車体底面を平らにするのは空気抵抗を減らして流速を上げるため、車体底面に溝を設けるのは、空気が流れる道(断面積)を狭くすることで流速を上げるため、ディフューザーの使用はリアに効率よく空気を排出することで流速を上げるため、というわけです。
ダウンフォースに関する注意点
より強いダウンフォースを得ようとウイングを立てたりすると、当然空気抵抗が大きくなることで最高速が落ちます。
そのため、トップクラスのレースになるとサーキットごとにエアロパーツの設定を見直す必要があります。
しかし、グランドエフェクトであれば車重の何倍ものダウンフォースを得ることができるばかりでなく、ウイングなどによるダウンフォースと異なり、空気抵抗の増加がほとんどありません。
そのため、特に高速コーナーでは信じられないほどの効果を発揮しますが、ひとたびダウンフォースを失うと車体がリフトするという事故の危険性も強くはらんでいます。
そう、ハイダウンフォースのマシンの場合に気を付けたいのが、ダウンフォースを失うリスクです。
スリップストリームに入るとダウンフォースによる恩恵を一気に得られなくなり、車体が不安定になります。
かつてはスリップストリームによってダウンフォースを失ったルマンカーなどがリフトを起こしてひっくり返る、なんていうシーンが見られることもありました。
マシンによってはほんの少し接触しただけでもダウンフォースが失われ、コーナリング性能などが著しく低下してしまう場合があります。
F1などで軽い接触でも比較的ピットインしやすいのはこういったことが影響しています。
また、グランドエフェクトについては路面と車体の感覚を一定に保つことで初めて最大の効力を得ることが可能となります。
そのため足回りはガチガチになり、ドライバーには高いテクニックが要求され、肉体的、精神的負担が大きくなる点も無視できません。
最後に、グランドエフェクトは強烈なので、市販車の底面をパネル等を用いて平らにする場合は、走行中に脱落しないように強固に固定するようにしましょう。
まとめ
今回はダウンフォースの恩恵とダウンフォースを得る仕組み、注意したい点についてまとめてみました。
ダウンフォースは高速域でないと効果が得られないという人がいますが、決してそんなことはありません。
確かにウイング一つ程度で体感できるかどうかは怪しいところがありますが、それでもグランドエフェクトを意識して車体底面を平らにしたり、ディフューザーなどを装着すれば公道のワインディングでも違いを感じることはできるはずです。
ただし、草レースレベルでダウンフォースに頼りすぎるのは危険な面もあります。
まずは基本的な運転技術を磨き、今ある車の限界を引き出せるようになることを優先しましょう。
終わり。