スリップストリームとは?その効果と注意点をまとめてみた!

スリップストリーム エアロダイナミクス

公道、サーキットに関わらず、車を走らせる上で避けては通れないのが空気抵抗です。

空気抵抗は速度の2乗に比例して大きくなるため、車速がある程度の高速域に達すると、空気抵抗の影響で加速が鈍り、最高速も頭打ちとなります。

逆に言えば、空気抵抗を軽減することができれば、加速、最高速共にメリットを得られるはずですね。

 

スリップストリームのメリット・デメリット

空気抵抗を軽減する最も効果的なテクニックが「スリップストリーム」です。

スリップストリームには多くのメリットがありますが、同時に注意したいデメリットも存在します。

まずはスリップストリームとは何なのか、その仕組みから見ていきましょう。

 

スリップストリームとは?

車を取り巻く空気の流れ図1.車体を取り巻く空気の流れ

 

スリップストリームとは、簡単に言えば高速で走る車の後ろに張り付いて、空気抵抗を軽減して走るテクニックのことです(厳密には空気抵抗の少ない空間や、その現象そのもののことを指します)

実際は空気抵抗が軽減されるばかりでなく、前走車が空気を高速で押しのけることで後方の空間の気圧が下がり、後続車がその空間に空気の渦とともに引き寄せられる力も働きます。

(図1における車体後方の矢印の向きに注目)

 

ある程度の高速域で、かつ前走車に接近する必要がありますが、スピードが上がれば上がるほど、スリップストリームによって得られる恩恵は大きくなります。

 

略して”スリップ”とも言い、「スリップに入る」、「スリップから出て抜きにかかる」などのように使われます。

 

スリップストリームのメリット

スリップストリームの最大のメリットは、先に紹介した通り、空気抵抗を軽減できる点にあります。

では具体的に空気抵抗を軽減するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

最高速が上がる

空気抵抗はいわば反対方向から押し返される力です。

それがないわけですから、まず単純に考えて、より加速しやすく、高い速度を出すことが容易になります。

 

燃費の節約

同じ速度で走る場合、空気抵抗が少ない方がエンジンの力を必要としないため、つまりはエンジンにかかる負荷が少なく済み、燃費を節約することができます。

 

特にもともと空気抵抗の大きなトラックやバスなどではこの効果は顕著で、これらの車種が連なって走行した場合、100km/h程度でも大きな効果があると言われています。

 

オーバーテイクしやすくなる

上述の通り、スリップストリームに入っている間はパワーを抑えて走ることが可能なため、そこから抜け出す際にフルパワーをかけて余力を使い切れば、一気に前走車を追い抜くことも可能です。

特に富士スピードウェイのようにストレートの長いコースではみるみる車間が縮まり、大きなリスクを冒すことなくオーバーテイクすることも可能となります。

 

スリップストリームのデメリット

メリットばかりが注目されがちなスリップストリームですが、残念ながらデメリットも存在します。

 

車間が狭くなるため危険

これはもっとも根本的な問題と言えるかもしれません。

スリップストリームに入るということは、前走車の真後ろを走るということです。

もし前走車に何らかのアクシデントがあった場合は追突の危険が伴うため、公道においては大変危険な走行方法だということを覚えておく必要があります。

 

冷却能力への影響

スリップストリームに入ると、空気の流れを利用して冷却水の温度を下げる役割を持つ「ラジエター」に風が当たりにくくなり、水温が上昇する可能性があります。

 

先ほど同じ速度で走行すればスリップストリームに入っている方がエンジンへの負荷が少なくて済むと言いましたが、水温が上がり続ければ負荷が少なくてもオーバーヒートの危険が高まることになります。

特にターボ車の場合は比較的エンジンルームが高温になりやすいので、常に水温の変化には気を付けたいところです。

 

ダウンフォースの減少

車体への空気抵抗が減るということは、その分空力を有効活用できなくなるということでもあります。

特にコーナリング時は顕著で、スリップストリームに入ったまま高速コーナーへ進入すると、十分なダウンフォースを得ることができず、アンダーステアが生じやすくなります。

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またダウンフォースがない分直進安定性も低下する可能性があり、注意が必要です。

 

特にF1のようなフォーミュラカーにおいては更に顕著で、空気抵抗が軽減されるメリットより、ダウンフォースが減少するデメリットの方が大きいと言われています。

 

脱出時に挙動が不安定になりやすい

スリップストリームを出てオーバーテイクを仕掛けようとする場合、急激な空気圧(抵抗)の変化が車体を襲うことになるため、車の挙動に細心の注意を払う必要があります。

これは、いわば風がない道を走っていたのに、急にものすごい圧の向かい風が吹くようなものです。

しかもスリップストリームを抜けるためには多少なりともステアリングを切る必要がありますから、挙動を乱す要素がそろいやすいとも言えます。

 

コーナーまでスリップストリームを抜けずに前車のラインをトレースした場合、先に述べたようにアンダーステアが生じる可能性もありますが、わずかでもラインを外れてしまったり、急激な速度低下によってスリップストリームの効果が薄れることで車が挙動を乱し、逆にオーバーステアを生じる可能性もあります。

そのため、ストレートで接近しすぎた場合は違うラインでコーナーにアプローチするか、十分に車速を落とすスローインファストアウトを心がけましょう。

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スリップストリームの体感

さて、スリップストリームを公道で実感することは可能でしょうか。

もともと空気抵抗が大きな車種(バス、トラック、ミニバンなど)であれば、高速道路などを走行する際に体感することが可能かもしれません。

 

しかし、ある程度スポーティーな車種になると、もともとの空気抵抗が小さいため、その効果を実感するにはそれなりの速度で走行する必要が出てきます。

そうなると、公道の制限時速においてその効果を体感するのは難しいかもしれません。

(体感できずとも効果がないとは限りません)

 

良くバイク乗りの間で、トラックの後ろを走ると走行が楽になると言われることがあります。

しかし、実際は多くの条件を重ねる必要があり、ほとんどの場合は疲労が軽減するほどの効果を得るのは難しいはずです。

 

なぜなら、前走車の過ぎ去った空間は負圧となり、周囲の空気が吸い寄せられ、左右から渦巻くように空気が流れ込むためです。

このため、楽になるどころか往復ビンタのように横方向からの空気を浴び、逆に姿勢を崩してしまう危険性があります。

またバイクでトラックへ接近すれば当然視界は大きく妨げられることになります。

 

メリットよりリスクの方が圧倒的に高いため、バイクでトラックの後ろにピッタリとつけるのは避けた方が良いと言えるでしょう。

 

まとめ

スリップストリームは本来レースにおいて使われるテクニックです。

熟練のドライバー同士がお互いのウデを信用して成り立つテクニックですので、いくら燃費が改善されるからと言って公道で利用しようとするのはおすすめできません。

しかしサーキットであれば話は別です。

多くのサーキットでオーバーテイクのきっかけになってくれるはずですから、積極的に利用していきましょう。

 

終わり。

 

 

PS.ちなみに管理人はアニメ「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」のおかげで小1にしてスリップストリームの存在を知りました(笑

サイバーシステムと呼ばれる学習型AIによるサポート、各種無公害エンジンやブースト加速といった最先端テクノロジー、現代のランボルギーニやフォーミュラEを彷彿とさせるマシンデザインなど、かなり時代を先取りしていたように思います。

実はOVAを含め10年続いた人気シリーズで、これを観た後にフォーミュラEを観ると感動を覚えるはずですよ!

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