タコメーターは必要?不要?本来の役割と有効活用したいシーンまとめ

トヨタ 86 タコメーター 安全装置

最近タコメーターが装備されない車種が目立つようになってきたと思いませんか?

有名どころで言えば、実はトヨタのプリウスにもタコメーターが装備されていないんです。

天下のトヨタがあれだけ知名度の高い車に搭載させないとなると、「タコメーターって必要ないんじゃないの?」という疑問が湧いてきても何ら不思議ではありません。

そこで、今回はタコメーターが役に立つ場面を挙げながら、改めてその必要性について考えてみたいと思います。

タコメーターはなくていいのか、あった方がいいのか。

あなたにとってタコメーターが必要かどうか、今一度チェックしてみてください。

アイキャッチ引用元:トヨタ 86 | トヨタ自動車WEBサイト

 

タコメーターとは

タコメーターとはエンジンの回転数を伝える計器のこと。

具体的には、エンジン内のクランクシャフトが1分間に何回転するかを表します。

同じエンジンであれば、基本的に回転数が高ければ高いほど燃料消費が増え、エンジンが頑張っている状態と考えることができます。ちなみに回転数が低すぎても、それはそれで燃費(効率)が悪化する可能性があります。念のため。

 

特にメーター内のメモリが赤くなったところはレッドゾーンと呼ばれ、針がレッドゾーン内にあるとき、エンジンに非常に高い負荷がかかった状態であることを表します。

レッドゾーンに入った状態を維持すると、最悪の場合は発火することもあり得ます。

 

タコメーターは何のためにあるの?

先述のとおり、昨今ではタコメーターのない車も珍しくなくなってきたように思います。

そもそも、なぜタコメーターが存在するのが当たり前だったのでしょうか。

 

ひとつは故障の回避のため。

例えばMT車の場合、タコメーターでエンジンの回転数を把握することができれば、エンジンの回しすぎによるエンジンブローのリスクは激減します。

先述のレッドゾーンを避けることができるわけですね。

最近の車はコンピュータ制御によって自動的に回転数が抑えられる場合も多いですが、昔の車は踏めば踏むだけエンジンを回せたため、回転数を監視することは非常に重要でした。

これ以外にも、エンジンが不調の際に感覚頼りではなくメーター上の数値で平常時と比較ができるという点もは大きなメリットです。

 

また、回転数に関する理解を深めることで、より車に寄り添った運転もできるようになります。

特に効率性を重視するスポーツ走行やエコドライブにおいては、より最適な走行の手助けとなる可能性があります。

これは今の車にも言えることですね。

 

なぜタコメーターがない車が存在するのか

では、なぜタコメーターがない車が存在するのか。

結論から言うと、大前提として挙げられるのが「なくても問題ないから」ということ。

これにコストの削減というメリットが加わります。

 

「タコメーターは必要なのか」

この問いにはいろいろな答えが考えられますが、少なくともタコメーターが搭載されない車種においては、「タコメーターは必要ないもの」と判断されたわけです。

そしてその車を買うのもタコメーターを必要としない人たちでしょう。

 

なぜタコメーターは不要と判断されるようになったのか。

その理由として、管理人は主に次の3つが挙げられるのではないかと考えます。

  1. エンジン性能の進化
  2. エンジンの信頼性や電子制御技術の向上
  3. MT車の減少と構造への関心の低下

 

1.エンジン性能の進化

車にはそれぞれ「最も効率良く力を発揮できる(車体を加速させることができる)回転域」というものが決まっており、この回転域をトルクバンドと言います。

実はエンジンの性能を効率よく引き出すためには、このトルクバンドをキープして走ることが重要です。

そしてトルクバンドをキープするためには、本来であればタコメーターを読むのが確実というわけです。

これはスポーツ走行においてもエコドライブにおいても、ある程度は共通して言えること。

 

しかし、今の車は昔の車と比べて、このトルクバンドが広い傾向にあります。

その理由は、例えばダウンサイジングターボをはじめとする過給機の進化や、ハイブリッド等におけるモーターアシストによる低回転域の強化。

更にCVT車はリニアにギヤ比を制御することでトルクバンドをキープして走ることが可能ですし、EV車も低回転から大きなトルクを発生します。

いずれも扱いやすさ重視のフラットなトルクが得られるため、昔よりも「トルクバンドを外さないように神経を使う必要性」自体が薄れてきています。

 

高速道路の合流を例に挙げてみましょう。

特に古いMT車の場合、速度や回転数から最適なギアを検討して加速に移る必要がありました。

高すぎるギアを選択していた場合、トルクバンドよりも回転数が低すぎて十分な加速が得られないからです。

しかし昨今の車においては、公道における合流程度ではわざわざシフトダウンしなくても十分な加速が得られることも珍しくありません。

AT車の場合も同様で、昔の車と比べてキックダウンの回数が減ったような気がしませんか?

これはわざわざシフトダウンをしなくても、そのままのギアで(低回転のままで)十分な加速が得られるからです。

いずれにせよ、かつてほど回転数を意識せずとも力強い加速が得られる点は、昨今の車における特徴の一つと言えます。

良くも悪くも乗りやすい車だらけになったものです・・・。

 

2.エンジンの信頼性や電子制御技術の向上

先述の通り、エンジンを回しすぎるとエンジンブローのリスクが増大します。

そのため、かつては回転数が上がりすぎないようにしっかりとタコメーターをチェックする必要がありました。

レッドゾーンまで回すようなことはスポーツ走行でもしない限りないだろうと思うかもしれませんが、例えば非力な車で急坂を上る場合、エンジンがうなればやはり回転数の上がりすぎが心配になります。

こういったシチュエーションでも、タコメーターがあれば目で見て回転数に余裕があるかどうかを判断できるので、安心して走れますよね。

 

しかし、昨今の車は電子制御によってレブリミッターがかかるため、エンジンを回しすぎる心配がありません。

更にその手前で警告音や警告ランプによってレッドゾーンを回避できるように作られている場合も。

 

また、エンジンの加工精度の向上によって、そもそも壊れたり不調を起こしたりといったこと自体が減っています。

壊れる頻度が減れば、「回転数に異常があるかどうかを頻繁にチェックする必要はない」と判断する人が増えても不思議ではありません。

少なくともエンジンが壊れやすかったり、オーバーレブの恐れがあった時代と比べれば、回転数に注意を払う必要性は薄れたと言わざるを得ません。

 

3.MT車の減少と構造への関心の低下

やはりタコメーターが最も真価を発揮するのはスポーツ走行をしたときでしょう。

特に古いMT車を運転する場合はしっかりと回転数をチェックしていないと、速く走れないばかりかオーバーレブによるエンジンブローのリスクが付きまといます。

一方で、一般的にAT車になるとMT車ほどタコメーターを必要とする機会は多くありません。

AT車ならエンジンの回転数が上がれば自動的にシフトアップしますし、そのタイミングもアクセルの踏み具合に応じてコンピュータが適切に判断してくれるからです。

エンジンの回しすぎによるリスクがほとんどないんですよね。

これを理由に「AT車ならタコメーターは要らない」という考え方が存在するわけです。

 

中には「タコメーターは要らない」というより「タコメーターって何?」という人が一定数存在します。

もちろん、スポーツ走行においてはAT車であっても、タコメーターから得られる情報は豊富にありますし、実はそれらの情報は街中においても有効活用することが可能です(例えば今踏み込めばどの程度加速するのか、アクセルオフでどの程度のエンジンブレーキが見込めるかなど)

しかし「なくて困るか」というと、多くの人にとってそうではないんですよね。

「タコメーターって何?」なんて言う人は、当然自分の車にタコメーターがなくても気にしません。

逆にタコメーターがあっても有効活用できない可能性が高いですよね。

そうやってユーザーの関心が遠のけば、コストダウンのために省略されてしまうのも致し方ないと言えます。

 

タコメーターがなくても音で判断できる?

ちなみにMT車でもタコメーターがないケースがあります。

しかしそのほとんどは、やはりスポーツ走行には向かない車種ばかりですね。

こういった車の場合、変速のタイミングは感覚や音で判断せざるを得ません。

とはいえ、乗り慣れた車であれば音で判断するのはそう難しいことではないので、あまり問題にはならないんですよね。

タコメーター付きのスポーツカーに乗っている人でも、シフトチェンジの度に必ずタコメーターを見るという人は稀でしょう。

 

ただし、最近の車は遮音性が高く、低回転時のエンジン音が聞こえずらいことがあります(音楽をかけるとなおさら)

慣れればスピード感覚だけでスムーズに変速できるようになりますが、それまではやはりMT車はタコメーターがあった方が便利ですね。

 

タコメーターを有効活用したい場面

「タコメーターは不要」と考える人がいれば、当然「タコメーターは必要、欲しい」という人もいます。

管理人はどちらかといえば後者ですが、タコメーターが欲しいという人はどのように活用するのでしょうか。

ここでは管理人が考える「タコメーターを有効活用したいシーン」をご紹介してみたいと思います。

 

1.シフトタイミングの見極め

先ほど触れたばかりですが、最近の車は遮音性が高く、低回転時のエンジン音が聞こえにくいことがあります。

そんな場合も、タコメーターがあればエンジンの状態を手っ取り早く把握することができます。

そしてその情報を最も活かせるのが、シフトアップのタイミングを見極めるとき。

シフトアップしても問題なく加速できると判断できれば、無駄に回転数を上げることなく、早めにシフトアップを行うことでエコドライブにつながる可能性があります。

いくらトルクバンドが広がったとはいえ、やはり効率を追い求めるとタコメーターから得られる情報は有用です。

 

ちなみに、AT車でも一定速度まで加速してから一瞬アクセルを抜くとシフトアップできることがあります。

昨今の車においては電子制御の発達や多段化等によりあまり意識しなくても最善のシフトを選択してくれますが、特に古い車ではエコドライブのためにかなり有効なテクニックです。

 

2.エンジンブレーキの活用

エンジンブレーキを最大限活かそうとした場合、シフトダウンは避けて通ることができません(厳密にはアクセルを放すだけで効きますが)

しかし、シフトダウンをするとエンジンの回転数は上昇します。

そのため、「シフトダウンをしても回転数が上がりすぎないかどうか」を事前に把握しておくことは、エンジンブローを避けるために非常に重要。

ここで有効活用したいのがタコメーターです。

例えば「シフトアップしたときに6000rpm→4000rpmだったから、4000rpmまで落としてからシフトダウンをすれば6000rpmで下のギアにつなげられるな」という具合。

少なくとも音やスピードなどの感覚に慣れるまではかなり役に立ちます。

もちろん、最近のAT車の場合はオーバーレブの恐れがあるシフトダウンは電子制御により無効とされる場合がほとんど。

そういった車ではいちいちタコメーターを見なくてもエンジンが壊れる心配はありませんが、「ピー」っという警告音とともに車にシフトダウンを操作を拒否されるのは、ちょっとダサいですよね。

 

タコメーターで現在の回転数を把握し、シフトダウン後の回転数を予測する。

これによって、どの程度のエンジンブレーキが得られるかの目安とすることが可能です。

 

3.アイドリングの異常発見

停車中のエンジン回転数がいつもと異なる場合、何らかの不具合が発生している可能性があります。

例えば管理人は180SXに乗っていたころ、エアフロセンサーが汚れたせいでアイドリング不調に陥ったことがあります。

取り入れる空気の量を正確に測れなくなってしまったせいで、エンジンが正常に回らなくなってしまっていたのです。

タコメーターの針に違和感を覚え、すぐにメンテナンスすることができましたが、これを放置しておくと、最悪は回転数が落ちたときにクラッチを踏んでもエンストしてしまう恐れがありました。

これは一例ですが、タコメーターでアイドリングの異常を察知できれば、トラブルを未然に回避できる可能性は十分にあります。

もちろん振動や音で違和感に気がつく人もいるでしょうが、タコメーターであれば数値として把握できるので、より確証を持ちやすいですよね。

振動や音だけで判断する場合と比べて「気のせいかな?」で済まされる確率は低くなるはずです。

更に、修理工場へ異常の詳細を伝える際にも具体的に伝えられるというメリットがあります。

それに日ごろからタコメーターに注意を向けるということ自体が車に関心を持つことにつながり、回転数以外の異常、違和感にも気がつけるようになるかもしれませんね。

いくら昨今の車の信頼性が高くなったとはいえ、例えばプラグの劣化なんかはどうしても起こりますし、気にかけていても損はないと思います。

ちなみに冬場は暖気のためにアイドリングが高回転になる場合が、車種によってはライト類の点灯によってアイドリングが弱まる場合もあります。

そのためあまりナイーブになりすぎる必要はありませんが、「いざという時にタコメーターで確認できるかどうか」は結構大きな差になります。

 

4.CVT車における常用回転域の把握

CVT車の場合、基本的に車が勝手に最も効率的な回転数をキープして走行してくれます。

こう聞くといちいちタコメーターで何を管理するんだと思うかもしれませんが、実はCVTが選択する回転数は踏み方(加速のさせ方)次第で上下するため、踏みすぎかどうかを視覚的にチェックしやすいんですよね。

一口に効率的な回転数と言っても、加速のための効率とエコのための効率は違います。

踏み方次第で、どちらを重視するべきか車が判断してくれるわけです。

 

ギヤチェンジの影響による回転数の上下がないCVT車は、ATやMTと比べても踏みすぎかどうかを視覚的に把握しやすいので、やっぱり個人的にはタコメーターが欲しいところ。

余談ですが、CVTのMTモードってギア抜けによる空走がなくてレスポンスが良いですよね。

MTモードを多用する人にとっても、やはりタコメーターは状態の把握に役立てられると思います。

 

また、もしそれほど加速していないのに回転数が高くなるようであれば、なんらかの抵抗が生じている可能性も考えられるため、異常の検知にも役立ちますね。(人や荷物の積みすぎでも回転数が上がる場合がある)

 

5.MT車限定のあれこれ

MT車を運転する場合、やはりタコメーターの出番は多くなります。

いくつか見てみましょう。

 

坂道発進

坂道発進においては、いつもよりちょっとだけ回転数を高くしてから発進することでエンストを回避できます。

タコメーターがあれば「いつもは2000回転でクラッチをつなぐから、坂道では3000回転まで上げてみよう」といった具合に、視覚的に目安を定めることができるので、初心者にとっては心強い味方になるはずです。

 

スポーツ走行

特にNA(自然吸気エンジン)車でスポーツ走行をしようとすると、パワーバンドの広いターボ車などと比べて精密なシフト選択が求められます。

データとして何回転から何回転までをキープすれば速く走れるかがわかっていれば、タコメーターをチェックすることで効率的に腕を磨くことが可能となります。

 

ドリフト走行

ドリフト走行の練習においてもタコメーターは必須と言えます。

特に最初に練習するであろうアクセルターンや定常円においては、「何回転をキープして走る」といった練習をすることで、繊細なペダルワークやスピードコントロール、ドリフトアングルのコントロールなどを身に着けることが可能となります。

また、ドリフト走行においてはリアの空転を維持するためにエンジンをあおることが日常茶飯事です。

しかし、回転数の上げすぎはエンジンブローに直結するため、タコメーターやシフトインジケーターなどでしっかりと管理する必要があります。

 

ブリッピングシフトダウン(ヒールアンドトウなど)の練習

サーキットでMT車を速く走らせるための必須テクニック、ヒールアンドトウ。

これを身に着けるためには、エンジンの回転数とギアの関係性をしっかりと理解しておく必要があります。

その仕組みがわかったら、次はタコメーターをチェックしながらアクセルをあおり、回転数を合わせる練習。

練習中はタコメーターによって視覚的に情報を得ることで、エンジンの状態をイメージしやすくなります。

もちろん、慣れれば感覚と音でOKです。

 

タコメーターはAT車だと不要でMT車だと必要?

タコメーターが不要という主張の中に、「MT車なら欲しいがAT車なら要らない」という意見があります。

この考え方が広まったことも、AT車の割合が極めて高い日本国内において、タコメーター非搭載車が増えた一因である可能性は高いですね。

実際、ただ走るためであればタコメーターは要らないと思います。

しかし、それ以上の情報を求める場合はタコメーターが欲しくなるのも事実。

これはATであろうがMTであろうが変わらないんですよね。

MTの方がMTゆえにタコメーターを必要とするシチュエーションがあるとすれば、それは先に紹介した通り、ほとんどが「何かを練習するとき」。

必ずないとダメかというとちょっと怪しい。

なくてもどうにかなる。

たとえMT車であっても公道を走るうえでは必ずしもタコメーターは必須とは言えない気がします。

しかし、繰り返しになりますが、実際はタコメーターがあれば得られる情報はたくさんあります。

エンジンの回転数がわかればシンプルに踏みすぎか踏みが足りないかの判断材料になりますし、先述の通り不具合の早期発見にも役立つ可能性があります。

ただ、これらの情報はAT車においても有用性は変わらないんですよね。

 

あとがき│タコメーターは情報の塊。やっぱりあった方がいい

結局、タコメーターが要るか要らないかは考え方や車の使い方次第かなと思います。

AT車だってより多くの情報が欲しければタコメーターがあった方がいいし、MT車だってただ走るだけならタコメーターがなくてもさほど困りません。

しかし、ただ運転する以上のことを求めたとき、やっぱりタコメーターは欲しいですよね。

より速く走るため、より派手に走るため、より快適に走るため、よりエコに走るため、また初心者が快適に運転するためにも役立ちます。

個人的には運転を上達させるために欠かせない計器だと考えているので、タコメーターがない車は自然と選択肢からなくなります。

異常察知の面でも、得られる情報が多いに越したことはありませんしね。

 

もしあなたや家族がタコメーターのない車を検討していたら、一度その存在を思い出してみてはいかがでしょうか。