ながら運転厳罰化!?法改正後の罰則は?どこからアウト?

ながら運転の厳罰化 安全運転

スマホなどを使用しながら運転をする、いわゆる“ながら運転”が厳罰化される方針にあるようです。(外部参考記事:スマホ「ながら運転」厳罰化へ 事故なくても懲役6月以下 – 産経ニュース(2018.1.14 09:55)

2019年9月13日追記(以下青文字が追記内容)

2019年9月13日、ながら運転について厳罰化された改正道交法が、同12月1日より施行されることが閣議決定しました。

 

ながら運転厳罰化!?新しい罰則と基準とは?

携帯電話などを注視・操作しながら車を運転する危険行為に対し、政府が道路交通法改正で罰則を強化する方針であることが13日、分かった。

引用元:スマホ「ながら運転」厳罰化へ 事故なくても懲役6月以下 – 産経ニュース(2018.1.14 09:55)

というわけで、罰則が強化されるようです。

そこで現在の罰則と法改正後の罰則、具体的な罰則の基準、気になるグレーゾーンについてまとめてみました。

※本記事における“ながら運転”とは、「道路交通法 第七十一条(運転者の遵守事項)第五号の五の規定に違反すること」(主に「携帯電話等を使用しながら運転すること」)を指すものとします。

 

ながら運転に関する従来の罰則と法改正後の罰則

スマホ等の無線通話装置や画像表示用装置の使用に関する罰則は2通りあります。

一つはスマホ等の使用によって道路における交通の危険を生じさせた場合の“携帯電話使用等違反(交通の危険)”、もう一つは平成16年に追加された、交通の危険には及ばない単純な使用の場合の“携帯電話使用等違反(保持)”

運転中にスマホを使用し、その結果交通の危険を生じさせたら前者に該当し、罰則は重くなります。

“交通の危険”とは、例えば他の違反(信号無視、一時停止無視等)や交通事故などを指します。

後者は“保持”とありますが、走行中にスマホ等を手に持った状態で行われる「通話」、「メール」、「その他操作」、「ディスプレイの注視」などの行為を含めたものが該当します。

 

まず従来の罰則。

  • 携帯電話使用等違反(交通の危険)→ 3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
  • 携帯電話使用等違反(保持)→ 5万円以下の罰金

ただし、これらの違反は「交通反則金通告制度」によって「反則金の納付と行政処分のみ」で処理される“軽微な違反”に該当します(いわゆる青切符を切られるというやつですね)。

そのため、ながら運転も実際は次のような交通違反点数と反則金によって処理されます。

  • 携帯電話使用等違反(交通の危険)→ 2点・9,000円
  • 携帯電話使用等違反(保持)→ 1点・6,000円

 

これが2019年12月1日付けの法改正後はどうなるのでしょうか。

携帯電話使用等違反(交通の危険)は

3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金 → 1年以下の懲役または30万円以下の罰金(2019年9月13日確定)

交通違反点数は2点→6点(一発免停!)。

携帯電話使用等違反(交通の危険)については、“実際に事故に及ばなかったとしても”先の「交通反則通告制度の対象から除外される」ようですので、上記内容のまま「刑事手続き」を受けることとなります。

わかりやすく言えば、反則金の適用がなくなり、かならず刑事罰が適用されるということ。

 

携帯電話使用等違反(保持)は

5万円以下の罰金 → 6月以下の懲役または10万円以下の罰金(2019年9月13日確定)

となります。

ただし、こちらは交通違反点数と反則金によって処理されるのが普通で、この場合

交通違反点数は1点→3点、反則金は6,000円→18,000円。
(大型:7,000円→25,000円、普通:6,000円→18,000円、2輪:6,000円→15,000円、原付:5,000→12,000円)

かなりの厳罰化ですね。

 

罰則の対象となる行為は?信号待ちでの使用はOK?

ついでなので、運転中のスマホ等の使用がどのように禁じられているのか、もう少しだけ詳しく見てみましょう。

 

現行の道路交通法(平成30年1月現在)では「運転者の遵守事項」として次のように定められています。

第七一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
五の五 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百二十条第一項第十一号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。第百二十条第一項第十一号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。)に表示された画像を注視しないこと。

 

また、具体的な罰則に関しては次のように記されています。

第百十七条の四 一の二 第七十一条(運転者の遵守事項)第五号の五の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者(一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金)

第百十八条 三の二 第七十一条(運転者の遵守事項)第五号の五の規定に違反して無線通話装置を通話のために使用し、又は自動車若しくは原動機付自転車に持ち込まれた画像表示用装置を手で保持してこれに表示された画像を注視した者(第百十七条の四第一号の二に該当する者を除く。)(六月以下の懲役又は十万円以下の罰金)

 

要約すると、「停止しているときを除き、無線通話装置(スマホ等)を手で保持しながら通話をしたり、画像表示用装置(スマホ等)の画面を注視したりしてはいけない。」ということです。

「手で持って通話をしたり画面を見たりするのはダメ」ですが、スマホ等を手に持つこと自体はここでは禁止されていませんね。

例えば「停止してからメールのチェックをするために、運転しながらポケットやカバンからスマホを取り出す」等は可。

ただし「通話のために使用しないこと」とありますので、取り出して手に持った理由が「着信を受けたから」などの場合は違法となりそうです。

 

なお、「停止しているときを除き」とありますので、信号待ちや渋滞で完全に車(タイヤ)が停止している場合はすべて対象外となります。

しかし、少しでも車が動けば即座に違法となりますし、「青信号に気付かない」、「周りの交通に注意していない」、「緊急車両に気付かない」などと指摘される可能性もありますので、やはり極力使用しない方が良いと言えます。

 

ところで、「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。」とありますので、厳密には車が停止していないときに「カーナビの画面を“注視”すること」も違法です。

当然スマホのナビアプリを利用している場合も同様ですから、スマホホルダーに設置したスマホを見る場合は“注視”することがないように気を付けたいところ。

ただし、罰則の項には「手で保持してこれに表示された画像を注視」した場合を対象とする旨のみが記されており、実際はカーナビや「スマホホルダー」などに固定されたスマホ(取り付けられた画像表示用装置に表示された画像)を注視する行為自体が罰せられることはないと捉えられます(違法だが罰則の定めなし)

ただし、道路における交通の危険を生じさせた場合は「第百十七条の四 一の二」に該当し、カーナビであろうが固定されたスマホであろうがアウト(一発免停!)。

なお、カーナビや固定されたスマホをタッチ操作する行為自体は、「手で保持してこれに表示された画像を注視」にあたらない(保持ではない)ため、ここでは処罰の対象外となります。

ただし、タッチ操作をする際は必然的に画面を注視する必要があるはずですから、やはり走行中の操作は避けた方が無難ですね。

関連記事

 

ハンズフリー通話は合法?違法? 安全?危険?

既に触れてしまいましたが、ハンズフリー通話はスマホなどを「保持」しない限り違法ではありませんが、「通話のために」スマホ等を保持することは違法となりますので、通話時にハンズフリーでも発信のためにスマホを手に持って使用したらアウト。

手に持たずに使用可能なハンズフリー装置、あるいは固定されたスマホを操作して発信するのはOK。

 

ただし、「道路交通法」に適合していれば必ずしも安全かと言うと、そうとは限りません。

多くの都道府県の条例の中には「安全な運転に必要な音声が聞こえない状態で運転すること」を禁じるものがあります。

ハンズフリー通話自体は問題ありませんが、イヤホンの使用や音量などによってはこういった条例に抵触する恐れは十分にありますので注意が必要です。

 

そもそも「法令違反、条例違反でないから安全」とするのは危険です。

管理人は二十歳前後の頃、運転中にドラマCD(CDに音声のみのドラマを収録した物)を聞きながら運転をしており、気を取られすぎてヒヤリとしたことがあります。

それ以降、運転中はラジオも聞きませんし、交差点に進入する際や車線変更の際などは同乗者との会話も中断します(意識して会話を止めているわけではなく、フルに運転に集中していると会話ができなくなってしまうというだけなのですが 笑)

そんなわけで、ハンズフリー通話が法的にOKでも管理人はやりません。

今や職種によっては必須ということもあるでしょうから「だからみんなも止めよう!」とは絶対に言いませんが、自分の集中の妨げになるもの、つまり安全の妨げになるものは極力排除した方が無難ですよね。

 

「安全運転の義務」にも注意

第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

上記のように、道路交通法には大前提として「安全運転のための義務」が定められています。

違反した場合は三月以下の懲役又は五万円以下の罰金(第百十九条)。
(実際は「交通反則金通告制度」によって「反則金の納付と行政処分のみ」で処理され、交通違反点数2点、反則金9,000円)

 

今回の「ながら運転」に該当しない行為であっても、安全運転義務違反として指摘される可能性は大いにあります。

例えばスマホを保持していても通話や画面の注視がなければながら運転にはなりませんが、これによってハンドル操作がおろそかになるようであれば安全運転義務違反に該当するかもしれません。

 

となれば、「画面を“注視”したかどうか」、また「どこからが注視にあたるのか」を議論することはあまり重要ではありません。

安全をおろそかにした時点でアウト。

一事が万事と思って油断しないことが大切ですね。

 

あとがき

これだけ「ながら運転は危ない」と叫ばれているにも関わらず、未だにかなりの頻度でながら運転をしている車を見かけます。

しかし、スマホの使用で一発免停や反則金18,000円などの厳罰化がなされることは、かなりの抑止力になるのではないでしょうか。

 

余談ですが、ながら運転の話題になると「全てMT車にすればながら運転はなくなる!だってできないから!」みたいな意見が出てきますが、そんなことは絶対にありえません。

いくらMT車でもずっとシフトチェンジをしているわけではありませんし、MT車に慣れた人であれば運転しながら片手に何か物を持つなど造作もないことです(あくまでできるできないの話)

現時点で最も大切なのは、ドライバー自身が「ながら運転がどれだけ危険か」ということをしっかりと自覚すること。

 

昨今はあおり運転も話題で、こちらも早急な法整備が必要と考えられていますね。

それとは別に、自分の身は自分で守るという意識も必要です。

 

「自分だけは大丈夫」などとは決して思わず、ドライバーは運転に集中し、安全運転を心掛けましょう。