寒くなってきたら気を付けたいのが、積雪や路面凍結の影響による“スリップ”。
今や多くの地域で夏用タイヤと冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ)を履きかえることが一般的となり、昔と比べれば格段に安全な冬のドライブが可能になりましたが、各種チェーンが店頭から消える様子は一向にありませんよね。
そう、スタッドレスタイヤや各種チェーンにはそれぞれメリット・デメリットがあるのです!
スタッドレスタイヤと各種チェーンの比較
当然ノーマルタイヤのまま雪道や凍結路を走るのはNGです。
そこで選択肢としてスタッドレスタイヤや各種チェーンなどが挙がるわけですが、どれを選択するのが良いのでしょうか。
ここでは各手段のメリットとデメリットをまとめています。
スタッドレスタイヤのメリット・デメリット
引用元:ブリヂストン スタッドレスタイヤ BLIZZAK VRX(Amazon)
スタッドレスタイヤが普及した結果、どんなに路面状況が悪い道でも「スタッドレスタイヤだから大丈夫」と考えられてしまうケースも多く、若い人と話をしていると特にその傾向が強いように感じます。
しかしその考えは危険です。
・・・と言いたいところですが、なんと実際にその通りになりつつあります。
スタッドレスタイヤの性能の進歩は目覚ましいモノがあります。
ブリヂストンが1982年に初めて販売したスタッドレスタイヤ(非発泡ゴム)と最新モデルであるBLIZZAK VRXとの氷上性能には実に3倍もの進化がみられます。
上記はブリジストンのHPより引用させていただきましたが、この中では「現行モデルとなるBLIZZAK VRXが2013年に登場」と記載されているので、約30年で3倍も性能が上がったことになります。
その結果、今やスタッドレスタイヤはほとんどのチェーン規制にも対応するほどの性能を持つようになりました。
スタッドレスタイヤを選ぶメリットは実に多いです。
- 乾燥路も走れるのでいちいち脱着する手間がない(一度ノーマルタイヤから履き替えれば路面状況に関わらず走り続けられる)。
- 耐久性が高く、100km/hを超える走行も可能(ただしノーマルタイヤと比べると剛性が低いため、法定速度を超えた高速走行は危険です)。
- チェーンよりも急制動に強い。
- スタッドレスタイヤは基本的に4輪とも装着するため駆動輪のみチェーンを装着した場合よりも安定感が得られ、坂道や圧雪路においてはチェーンを上回る走行安定性を発揮する場合がある。
- 振動が少なく快適。
逆にデメリットには以下のようなものがあります。
- 価格が高い。
- 保管方法次第では未使用でも性能が低下する。
- 各種劣化や性能低下の判断が難しい(チェーンの破断のようなわかりやすい変化が生じにくい)。
- ノーマルタイヤ(オフシーズンはスタッドレスタイヤ)の保管場所を要する(最近は購入店舗などで保管を代行してくれるサービスもあり)。
- 4WD以外の駆動方式の車においては、乱暴な加速をした場合にホイールスピンする恐れがある。
- 雨天時等の濡れた路面においてはノーマルタイヤよりハイドロプレーニング現象を起こしやすく危険。
ネックとなるのはやはり価格ですが、技術の進歩、4輪をカバーできること、振動が少ないことなどから、運転のしやすさばかりでなく、今や総合的な走行性能も各種チェーンを上回ると言えるかもしれません。
いざというときはスタッドレス+チェーンという組み合わせが可能なのもポイントですね。
ただし、スタッドレスタイヤは各種劣化による性能低下が目で見て判断しにくいという問題もあり、買い替えの判断を誤ると急激に危険度が増す点には注意が必要です。
スタッドレスタイヤの寿命は一般的に3~4年と言われていますが、走行距離や保管状況等によっても大きく変わる可能性があります。
特に劣化が進んだスタッドレスタイヤで進化した最新のスタッドレスタイヤを装着した他車のペースに合わせて走るのは危険ですので、摩耗が少なくてもできれば5年以内には交換したいところです。
ところで、実はスタッドレスタイヤは全ての悪路に強いわけではなく、意外なことに濡れた路面の走行は苦手です。
また多くの場合スタッドレスタイヤは乾燥路においてはコスパが悪いので、オフシーズンはノーマルタイヤに戻した方が経済的かつ安全と言えます。
タイヤチェーンのメリット・デメリットと素材別の特徴
引用元:コーニック 金属タイヤチェーン P1マジック PM-030(Amazon)
タイヤチェーンには金属製、樹脂・ゴム製、布製などいろいろな種類がありますが、とりあえずはスタッドレスと各種チェーンの違いということでまとめていきます。
メリット
- 価格が安い。
- コンパクトに折りたためるため、場所を取らず携行しやすい。
- 氷上性能はスタッドレスタイヤより優れる場合がある。
- 新雪の上などでもホイールスピンを生じにくいため、4WD以外の駆動方式の車でも発進、登坂がしやすい。
デメリット
- 乾燥路では使えないと考えた方が良く、そのため路面状況に応じて頻繁な脱着が必要となる。
- 脱着が面倒くさい(難しい)。
- 乗り心地が悪くなり、走行音がうるさい。
- 適切な取り扱いをしないと車体を傷つける恐れがある。
- チェーン脱着所にたどり着くまでに怖い思いをする可能性がある。
最後のデメリットが結構重要です。
これはスタッドレスタイヤのメリットとも言えるのですが、「チェーンを用意したから大丈夫」と思いきや、路面が凍結していることに気付くことができずに“チェーンを装着する前に”滑ってしまう、なんていうケースが考えられます。
仮に路面の凍結に気付いても、雪がなければチェーンを取り付けるのはためらわれますよね。
スタッドレスタイヤであればこういった心配や気苦労は要りません。
しかし、確かに脱着を考えるとお手軽さの面では劣りますが、いざという時の備えとして考えると携行しやすくコスパにも優れるというメリットも見逃せません。
続いて材質別の特徴を見てみましょう。
金属チェーンの特徴
先の画像のような昔ながらのチェーンで、街中でも路線バスがじゃらじゃらと音を立てながら走る様子が見られたりしますね。
このタイプは乾燥路でスピードを出すと切れやすく、金属製なので車体やホイールを傷つける恐れがある点に注意が必要です。
しかしコンパクトに収納でき、雪道をゆっくりと走る分には最も安価な手段として有効です。
また非金属製のチェーンと異なり、壊れない限り長期間使用することが可能です。
雪が降る地域で使用される凍結防止剤や融雪剤には塩化カルシウム等が用いられる場合があるので、錆びさせないためにも使用後のチェーンは洗浄等のメンテナンスを心掛けましょう。
樹脂(ゴム)チェーンの特徴
引用元:カーメイト【2017年モデル】簡単装着日本製 JASSA認定 非金属タイヤチェーンバイアスロンクイックイージーQE2LI(Amazon)
近年多く見かけるようになったのがこの非金属製のチェーンで、管理人は10年以上前から使用しています。
非金属製のチェーンには主に樹脂製とゴム製の2種類があり、いずれも滑り止め用の金具が設けられているのが一般的です。
一昔前はチェーンと言えば金属製というイメージが強かったように思いますが、今ではスキー場の駐車場などでも樹脂チェーン・ゴムチェーンの割合が多くなったように感じますね。
取り付けは金属チェーンよりやや難しい印象がありますが、初めてでも30分もあれば脱着できるのではないでしょうか。
一般的に金属チェーンと比べると速く走ることが可能で乗り心地も良いため、一度樹脂チェーン・ゴムチェーンを使用するとなかなか金属チェーンに戻る気にはなれないかもしれません。
また走行音も金属チェーンほど大きくはないので、「もしかして凍結してるかも?」という程度の道でも積極的に活用しやすいと思います。
布チェーンの特徴
引用元:オートソック 布製タイヤすべり止め ASKY13(Amazon)
非金属製のチェーンの中でもやや特殊なのが、この布製のチェーンです。
正直な話、布製チェーンは金属チェーンや非金属製チェーンと比較すると性能も耐久性も劣りますが、それでも雪道を走るのに最低限の性能はあり、国内自動車メーカーでも純正オプションにこの布チェーンを設定しているケースがあるほどです。
装着も簡単でお手軽ですが、一部のチェーン規制には対応しないことがあるようなので、明らかに路面状態が悪いところを走る予定であれば他の手段を用意しておいた方が無難です。
あくまで異常気象対策などの緊急時用と考えておくのが良さそうですね。
おまけ スプレーチェーンのメリット・デメリット
引用元:タイヤグリップ スプレー式タイヤチェーン BGTG-1(Amazon)
こちらも布チェーンと同じく緊急用として考えておいてほしいアイテムではありますが、タイヤに吹き付けるだけで雪道、凍結路の走破性を高めてくれるという便利グッズです。
ただボディーやホイールに付着すると除去をするのが大変という声も多く聞こえますので、本当にいざと言うときのためと考えておいた方が良いかもしれません。
普段雪が降らない地域でスタッドレスタイヤを装着する習慣のない人にとってはかなり便利なアイテムになりそうですね。
Amazonの商品紹介では「北欧、北米ではスタッドレスタイヤでもスプレーします。」とありますが、うーん、溝が埋まって逆効果ってことはないんですかね?ちょっと怖い気もします。
当然効果は一時的なものですので、スプレーしたからと安心するのはちょっと危険かもしれません。
一応70kmまでは何らかの効果が得られるということですが、できればその何倍も短いスパンで重ねがけしておきたいところです。
実は知られていない?雪道をノーマルタイヤで走るのは法令違反!
2018年1月22日、日本列島を強烈な寒波が包み、東京都心部も数十cm積雪したりレインボーブリッジが通行止めになるなど、記録的な大雪となりました。
外部参考記事 大雪で首都パニック レインボーブリッジ封鎖、山手トンネルで立ち往生 – zakzak
レインボーブリッジの封鎖は、ノーマルタイヤで身動きが取れなくなった車と、そういった車によって引き起こされた玉突き事故が原因だったようです。
何とこの日、都心だけで600件を超えるスリップ事故などがあったというのだから驚きです。
それだけノーマルタイヤで走る人が多かったということですね。
恐らくこういった人は知らなかったのだと思いますが、実は多くの都道府県(と言うか沖縄県以外)では「明らかにすべると認められる状態にある道路における運転時、タイヤチェーンを取り付ける等のすべり止めの措置を講じなければならない」という趣旨のルールが設けられています。
違反すると反則金は6,000円。
いや、法令違反だからノーマルタイヤはダメというだけの話ではないのですが・・・。
そもそも雪道や凍結路をナメてかかるのが良くありません。
もっと重大事故を引き起こす恐れもあるわけですから、対策を用意できない場合は車に乗らないといった決断も大切です。
まとめ│スタッドレスタイヤの進化が目覚ましい
雪国の人に話を聞くと、チェーンよりスタッドレスタイヤの方が優れるという意見が多いように思います。
ノーマルタイヤ+チェーンの組み合わせはどうも敬遠されるようです。
安全性の以外にも、「チェーンは運転しづらい」ということも理由だとか。
そういった面が重視されるというのは、それだけ最新のスタッドレスタイヤの性能が十分なものであるという証左でもあるかもしれません。
問題は雪があまり降らない地域ですね。
普段積もることがないからと何の対策も取らなければ、いざ積もった時に身動きが取れなくなるか、無理に走行して事故を起こすハメになります。
わずかでも積もる可能性のある地域であれば、やはり一番のおすすめはスタッドレスタイヤに履き替えておくことです。
少し降ったくらいではチェーン(特に金属チェーン)を使いにくいという問題もありますし、そういった意味でもスタッドレスが最適解のような気もします。
最近はインターネットで安くタイヤを購入でき、近所の取り付け工場などを紹介してくれるネットサービスがありますので、こういったものを使うのも賢い選択と言えます。
詳しくはこちら↓
地域柄スタッドレスに履き替える習慣のない人、コスパを考えてスタッドレスを選択しない人も、樹脂製・ゴム製・布製チェーンかスプレーチェーンのいずれかは念のため準備しておきたいところ。
豪雪地帯や雪山を走る機会のある人は、スタッドレスに加えて金属製・樹脂製・ゴム製チェーンを用意すると、より確実だと思います。
冬の道路を侮ると必ず怖い思いをすることになります。
スタッドレス代、チェーン代をケチって車をぶつけては本末転倒ですから、しっかりと安全対策を意識して冬のドライブを楽しんでください。
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