今回紹介するのは自動車の駆動方式の一つ、“FRレイアウト”を採用した車に関する特徴とスポーツ走行のために気を付けたいポイントです。
“FR”はスポーツカーの代名詞。
乗ればその操作性の良さと、意のままに操る楽しさを感じることができます。
アイキャッチ画像引用元:【MAZDA】ロードスター ドライビングダイナミクス – エンジンやシャシーなど走りのための専用設計技術
FRとは?
FRはフロントエンジン・リアドライブ(Front-engine Rear-drive)の略。
つまり、車の前方にエンジンが配置され、後輪が駆動する方式ということです。
FF車が普及するまでは「車と言えばFR」と言われるほど普及していた駆動方式です。
早速そのメリットとデメリットを見てみましょう。
FR車のメリット
2019年現在、新車で買える国産FR車は片手で数えられるほどしかありませんが、それでもスポーツ走行好きの多くの愛好家に支持されています。
まぁFRに限らずスポーツ要素のある新車自体が少ないんですけどね・・・。
スポーツカーと言ったらFRを思い浮かべる人も多いと思いますが、いったいFR車の何がそうさせるのでしょうか。
ここではそんなFR車の魅力に迫ってみたいと思います。
意のままに操れる
FR車は後輪が駆動、前輪が操舵と、前後のタイヤでしっかりと役割分担ができています。
そのため操作性に優れる駆動方式なのです。
FR車の最大の魅力はその操作性の良さがもたらす良好なドライビングフィール。
FR車と言えばスポーツ性能が高いというイメージを持つ人が多いかもしれませんが、実は多くのFR車は走行性能よりも操作性や操作感、つまり「フィーリング」が重視されていることが多いです。
顕著な例が人馬一体をうたうマツダのロードスターでしょう。
エンジン出力に頼らず、そのドライビングフィールゆえにスポーツモデルとして広く認知されています。
FR車を楽しむのに速さはいらない、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、非力なエンジンでも運転を楽しむことができるのはFRレイアウトの大きなメリットと言えるでしょう。
加速性能が良い
FF車と比較した場合ですが、FR車は加速時にトラクション(タイヤが地面を蹴る力)がかかりやすいのが特徴です。
どういうことかと言うと、加速時の姿勢と駆動輪にそのヒントがあります。
車は加速しようとすると車体が後傾になります。
このとき、荷重が後輪に集中するため、後輪駆動のFR車は十分なトラクションを得ることができるというわけです。
同じ理由で後輪に荷重がかかることでトラクションを得やすい登り坂も得意なステージと言えるでしょう。
また加速時に十分なトラクションを得られるということは、それだけビッグパワーに耐えることができるということでもあります。
遊び方がいっぱい
FRほど遊べる駆動方式は他にありません。
代表的なのがドリフト走行ですね。
他の駆動方式でもできないことはありませんが、難易度が格段に高く、やはり最も意のままに操ることができるのはFR車の特権でしょう。
サーキット走行、ゼロヨン、ドリフトとなんでも楽しめるのがFR車です。
ゼロヨンと言えば、その場で後輪を空転させる”バーンアウト”が映えるのも後輪駆動ならではですね。
構造がシンプル
FF車はほとんどの機構がフロントに集中しているため、エンジン周辺の密度が濃く複雑なのが特徴です。
4WD車はその名の通り4輪を駆動しますから、更に複雑な構造と言えるでしょう。
その点FR車はとてもシンプルで、動力の伝達ロスを低減するためにエンジンが縦置きのケースが多く、その影響もあって各パーツの配置に余裕があることが多いです。
というか、これらの余裕を有効活用できる分、例えばタイヤの最大切れ角が大きいなど、「走りに有利な設計が施されていることがほとんど」と言った方が正確かもしれません(“リトラクタブルヘッドライト”搭載車などはあまり広々としていませんが)。
そのおかげで比較的自分でいじりやすいのもFR車のメリットと言えるでしょう。
また他の駆動方式の車より各機構が単純な分、トラブルが生じにくいとも言えます。
FR車のデメリット
さて、運転を楽しむにはもってこいのFR車ですが、どんなデメリットがあるのでしょうか。
どうやら良くも悪くもテールスライドがFR車のキーワードのようですよ。
悪路に弱い
後輪駆動車であるFR車は、特に砂利道や雪道のような路面状況の悪い道でテールスライドが起こりやすく、スリップの危険が高まります。
特に雪道の発進、加速においてはFFや4WDには一歩及びませんので、スタッドレスだけでなくチェーンなどで万全を期したいところです。
しかし中には雪道でドリフトを楽しむ人もいますので、悪路でテールスライドが起こりやすいことは必ずしも欠点とはなりません。
かつてのボルボは「雪道におけるFRには第二のステアリングがある(アクセルが第二のステアリングになる)」とアピールしていたこともあります。
それでも公道に限って言えば、悪路を走る際はいつも以上に慎重な運転を心掛ける必要があると言えるでしょう。
コーナーでスリップしやすい
悪路以外でもテールスライドが起こるケースがあります。
例えばコーナリング中にラフにアクセルを踏み込んだ場合などです。
つまりその分シビアな操作が要求される駆動方式と言えます。
とはいえ、テールスライドが起きてもある程度の腕があれば対処できますし、その難易度は同じ後輪駆動のMR車やRR車と比べればそれほど高くありません。
その繊細なコントロールを楽しむことができるようになれば、このデメリットも大して気にならなくなるでしょう。
それに街中ではよほどの大雨、大雪でもない限りその危険性を感じることはほとんどないでしょうし、最近の車であれば電子制御によって簡単にはスリップしないようにできているので、スポーツ走行をしなければほとんど気にする必要はないでしょう。
FF車よりコストが高い
これもFF車と比べた場合ですが、後輪を駆動させるための部品が必要な分、多少製造コストは高いと言えます。
そのため現在では安価な車には採用されにくく、新車では趣味性の高いクーペタイプか高級セダンでしかその乗り心地や操作性を味わえないのがデメリット。
室内空間が狭い
これもFF車と比べた場合のデメリットです。
コスト面と同様ですが、後輪を駆動させるためにプロペラシャフトを縦に通す必要がありますので、その空間の分、どうしても室内スペースが影響を受けることになります。
安定性や乗り心地の良さから高級セダンにも多く採用されるFRレイアウトですが、高級車の室内が狭く感じるのにはこんな理由があったんですね。
FR車の運転で気を付けたいポイント
FR車の運転で一番気を付けたいのは、デメリットにも挙げたテールスライドによるスリップやスピンの危険性です。
また速く走るためのポイントも気になるところですね。
具体的な内容はこちら↓に詳しくまとめていますので、是非ご覧になってください。
まとめ│FRは操る楽しみにあふれた駆動方式
メリットとデメリットをまとめてみましょう。
メリット・・・
- 意のままに操れる
- 加速性のが良い
- 遊び方がいっぱい
- 構造がシンプル
特に注目したいのはその操作性で、イメージ通り、意のままに操ることができることがFR車最大の魅力だと言えます。
デメリット・・・
- 悪路に弱い
- コーナーでスリップしやすい
- FF車よりコストが高い
- 室内空間が狭い
最大のデメリットは、やはりテールスライドを誘発しやすいことでしょう。
ただしそれもとらえ方次第ではFRの醍醐味の一つです。
また街中ではよほどの大雨、大雪でもない限り危険性を感じることはほとんどないでしょう。
FR車には車を運転する楽しさが詰まっています。
初心者は後輪駆動車で誰かと張り合うほど速く走るのは難しいかもしれませんが、テールスライドが起きやすい分、荷重のコントロールや繊細なアクセルワークも身に付きますし、向上心のある方にはうってつけの駆動方式と言えるのではないでしょうか。