スポーツ走行において、主にダウンフォースを得ることを狙って装着されることの多いウイングなどのエアロパーツ。
よくFF車にウイングは不要だという意見を見かけるので少し考察してみました。
FF車にウイングは不要?
結論から言うと、FF車でもウイングのメリットを得ることはできます。
これを読めばFF車のウイングがカッコだけのものではないということが理解していただけるのではないでしょうか。
ウイングとは?
ウイングとは一般的に飛行機の翼を上下逆転させたような断面を持ったパーツのことで、上下を流れる空気によって生じる圧力差でダウンフォース(下向きの力)を得ることができます。
代表的なものにGTウイングと呼ばれるものがあります。
ちなみに空気を遮る壁を設けることで空気抵抗をダウンフォースに直接変換するようなパーツはスポイラーと呼ばれます。
後輪駆動車であれば、これらによって得たダウンフォースでトラクションを向上させたり、コーナリング中にマシンを地面に押し付けることで安定性を得ることが可能になります。
ウイングがFF車にもたらす効果
ウイングがどういうものを指すのかわかったところで、いよいよFF車にも必要なのかどうかを考えてみましょう。
FF車の特徴についてはこちらをご覧ください→【FFのメリットとは?なぜ最近の市販車はFFが多いのか。】
FF車ではトラクション向上の恩恵は得られない?
さて、FF車は前輪にトラクションがかかって初めて十分な加速力を得ることができます。
しかしこれらのパーツが取り付けられるのは車体後方です。
つまりウイングを装着したからと言ってトラクションが増大したり、コーナーで安定したりといった効果はそこまで大きくないと言えるでしょう。
ではFF車にはウイングはつけない方が良いのでしょうか。
「ただのおもりになるのでは?」
「後輪にダウンフォースがかかると、加速時に余計フロント荷重が抜けやすいのでは?」
こう考えるのが自然ですね。
しかし、実はウイングの装着には重要なメリットがまだ残されています。
ブレーキング時の車体の安定
ウイングによってブレーキング時の車体の安定性を向上させることができます。
フルブレーキからコーナー進入にかけてバタつきがちなリアを路面に押さえつけるわけです。
特にFF車はもともとブレーキ時に車体が不安定になりやすいので、この恩恵はかなり大きいと言えます。
むしろこの恩恵のためだけにウイングを取り付ける価値があると言っても過言ではありません。
コーナリングの安定
FF車のコーナリングはアンダーステア傾向にはあるものの、基本的にはFR車などと比べると元々安定しています。
ではどういうことかと言うと、ポイントはタックインにあります。
FF車はコーナリング中にアクセルを戻すと急激にタックインする特性を持ちます。
このアクセルオフによる、FF車特有の急激なタックインを軽減させる働きがあるということです。
これによって操作性が増し、狙ったラインをトレースしやすくなります。
ライン取りの基本についてはこちら→【速く走るためのライン取り!意識したいたった3つのポイント!】
直進時の安定
ウイングには空気を整流させて空気抵抗を減らすという役割もあります。
このため、高速走行時の直進安定性にも影響してくると言えます。
FF車はもともと直進安定性は高いため体感は難しいかもしれませんが、それだけでなく燃費が向上するといった効果も望めます。
当然加速への影響はありますが、ウイングでダウンフォースを稼ごうとすればFRだろうがAWDだろうがトップスピードが落ちることに変わりはありません。
この辺はメリットと秤にかけて、ある程度は妥協するしかありませんね。
まとめ
このように実はFF車でも主に車を安定させるという意味で大きな恩恵を受けることができます。
特にブレーキング時に得られる恩恵は絶大と言えるでしょう。
車体が安定するということはそれだけ限界が高くなるということです。
たまに「じゃじゃ馬だけど速い車」という表現を目にしますが、かなりのレアケースだと思います。
基本的には乗りやすいマシンほど速いと考えて間違いありません。
また純正でリアスポイラーが付いている場合、「どうせトラクションかからないし、ただのおもりだろ」といって安易に外すのは危険かもしれませんね。
しかし、そもそもウイング自体の効果に懐疑的な見方をする意見も少なくありません。
というのも、ウイングが十分な効果を発揮するにはそれなりの車速が必要になるからです。
あくまでウイングはスポーツ走行のためのパーツであり、特にある程度基本ができて初めてその効果を発揮するということを覚えておきましょう。
おわり。