「スポーツ走行に興味はあるけど、どうやったら早く走れるのかさっぱりわからない。」
「いくらアクセルを踏み込んでもコーナーの度に置いていかれる・・・。」
そんなあなたにまず覚えてほしいのが、今回紹介する「アウトインアウト」と呼ばれるコーナリングテクニックです。
アウトインアウトの理屈をマスターすれば、多くのコーナーでコーナリング速度を向上させることが可能となります。
またアウトインアウトは速く走るためだけでなく、街中でスムースな運転をするためにも、また無駄な加減速をなくすことで燃費を向上させるためにも知っておいて損はない技術。
本記事を読んでスピーディーかつエコな走行を身に付けましょう。
ライン取りの基本、アウトインアウト
「アウトインアウト」という言葉、あまりスポーツ走行に詳しくない人でも、言葉自体はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。
アウトインアウトとはその名の通り、コーナー外側(アウト)から侵入し、内側(イン)をかすめ、外側(アウト)に向けて加速する、最も代表的かつ基本的なライン取りです。→ライン取りとは
図1.アウトインアウト
赤い線がアウトインアウトのライン。
道の真ん中を走るライン(緑)よりも直線に近いことがわかりますね。
実はこれが重要で、アウトインアウトで走る理由を一言で表すと「より直線的に走ることによるメリットが大きいから」と言えます。
より直線的に走ることができると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
アウトインアウトの恩恵1.高い速度を維持したまま曲がれる
一番大きなメリットはこれでしょう。
一見減速が必要そうなコーナーも、アウトインアウトを実践することでアクセル全開で抜けられるコーナーに早変わりするケースが多々あります。
通常、コーナー手前で減速をするのは減速しないと曲がり切れないからです。
しかし走行ラインが限りなく直線に近ければ減速は必要ありませんよね。
というのは極論ですが、道幅を有効活用してアウトインアウトを意識すれば、より直線的なライン取りとなり、高い速度を維持したままコーナーを抜けることができるというわけです。
アウトインアウトの恩恵2.車の動きがスムースになる
より直線的に走れるということは、よりハンドルを回す量が少なくて済むということです。
その結果、車の姿勢変化が少なくなります。
姿勢変化が少なくなれば運転がスムースになり、すると様々なところで無理がなくなり、運転に余裕が出てきます。
例えば更にコーナリング速度を上げるなど、ここで生まれた余裕を速く走るために有効活用することも可能。
車の動きがスムースになると加減速も減るため、結果としてエコ運転にもつながります。
また同じ速度であれば車体やドライバーにかかる遠心力(G)も小さくなり、乗り心地が良くなります。
必要最小限の動きしかしないので、同乗者の車酔いも起きにくいと言えるでしょう。
アウトインアウトの恩恵3.車やタイヤへの負担を減らせる
実際は直線的に走ってもタイヤを限界まで使ってコーナリングスピードを上げることになるため、アウトインアウトをしたからと言って車やタイヤをいたわれるとは限りません。
しかし同じ速度でコーナーを抜けることを前提とすれば、アウトインアウトを実践した方が圧倒的に負担が小さいことは、もうお分かりでしょう。
アウトインアウト()を実践することで、わずかなタイムロスと引き換えにタイヤを温存することが可能というわけです。
アウトインアウトのやり方とコツ
アウトインアウトは視覚的にも理解しやすく、理論も単純なので初心者でも親しみやすいテクニックと言えるでしょう。
ですが、見た目のわかりやすさのわりに正しく実践するのが難しいという奥の深さもあります。
そこでアウトインアウトを実践するために気を付けたいポイント(コツ)をまとめてみました。
1.道幅を最大限に活用する
アウトインアウトの「アウト」と「イン」は、道幅の「外側」と「内側」を表します。
つまり言い換えれば、アウトインアウトは道幅を有効活用するテクニックということです。
道幅を十分に使えないと、例えばミドル-イン-ミドル、アウト-ミドル-アウトのようなライン取りとなり、最大までコーナーの半径(“R”)を大きくすることができません。
アウトインアウトの目的はこの”R”をより大きくするということ。
つまり、より緩やかなカーブを自分で作るというテクニックなのです。
ただしアクセル全開のままインベタで抜けることが可能なコーナーでは、わざわざアウトに寄るのはタイムロスにつながります。
全てのコーナーでアウトインアウトをする必要があるとは限らないということも一つ覚えておいてください。
また複合コーナーの場合もちょっと特殊なので、別記事にまとめています↓
あくまでアウトインアウトは基礎中の基礎のライン取りです。
※公道では対向車や自転車、歩行者の存在に気を付ける必要がある点、端に寄るほど埃や落ち葉、砂利などのごみが多くなりタイヤが滑りやすくなる点に注意してください。冒頭にも書いたとおり、交差点では絶対に使ってはいけません。
2.スローインファストアウトを意識する
スローインファストアウトとは、十分に減速してからコーナーに進入(スローイン)し、出口に向けて加速しながらコーナーを抜ける(ファストアウト)というテクニックです。
スローインファストアウトはスポーツ走行に限らず、安全のための走行でも効果を発揮するテクニックなので、免許を取得する際に教習所で教わった人も少なくないと思います。
「高い速度を維持してコーナーを抜けるのではなかったのか」、と思われる方もいるかと思いますが、アウトインアウトを実践しても減速が必要になるコーナーはあります。
どこかで減速をしなければいけないのであれば、より早い段階で減速した方が車の向きも変えやすく、狙ったラインをトレースすることも容易になるのです。
またコーナーの脱出速度が速くなるというメリットもあります。
詳細は別記事にまとめますので、そちらで詳しくお話しさせていただきます↓
3.クリッピングポイントを意識する
もっとも難しさを感じるのが、ステアリングを切るタイミングではないでしょうか。
ここで意識したいのがクリッピングポイントをどこに置くか、ということです。
クリッピングポイントとは、コーナーの内側に最も接近するポイントのこと。
アウト‐イン‐アウトの最も「イン」にあたるポイントですね。
結論から言うと、クリッピングポイントはやや奥に設定するのが無難です。
こちらも詳しくは別記事にて↓
まとめ│アウトインアウトのメリットと実践時のポイント
アウトインアウトを実践する目的は、実際に車が通過するラインにおける”R(半径)”をできるだけ大きくして、より直線的に走ることでした。
直線的に走ることができると、次の3つのメリットがあります。
- 高い速度を維持したままコーナーを抜けられる
- 車の動きがスムーズになり、運転操作が簡単になったり、乗り心地が良くなる
- 車体やタイヤ、ドライバーにかかる負担(G)が小さくなりやすい
これらのメリットを考えれば、スポーツ走行をするうえで意識しないわけにはいかないテクニックだということがわかりますね。
実践するためには3つのポイントがありました。
- 道幅を最大限に活用することで、より直線的なラインを描く
- スローインファストアウトを意識することで、狙ったラインをトレースする
- クリッピングポイントを意識することで、ステアリングを切るタイミングを計る
アウトインアウトは視覚的には理解しやすいですが、実際にやってみると難しさを感じることもあるかもしれません。
そんな場合はまずは上の3つのポイントを意識してください。
特にオーバースピードでコーナーに進入し、クリッピングポイントを手前に置いてしまうと、コーナー後半で曲がり切れずにコースアウトしてしまうこともあります。
慣れないうちはスローインファストアウトだけでも確実に徹底するようにしましょう。
また、繰り返しになりますがアウトインアウトとあおりハンドルは別物なので注意してください。
適切なアウトインアウトは、スポーツ走行のみでなく安全運転やスムーズな運転、エコ運転にもつながるテクニックです。
今回紹介したように、速度が低いアウトインアウトにもメリットはあります。
ぜひ意識してあなたの運転に役立ててみてください。