アウトインアウトなど、速く走るためのライン取りを意識したときにもっとも難しさを感じるのが、ステアリングを切るタイミング。
しかし、これは“クリッピングポイント”を意識するだけである程度改善することができるんです。
問題はクリッピングポイントをどこに置くかということ。
クリッピングポイントを意識することは、コーナリングにおける上手なライン取りのために必要不可欠と言っても過言ではありません。
クリッピングポイントとは?
コーナリング中に車が最もイン側に寄った地点をクリッピングポイントと言います。
気を付けたいのはコーナーの物理的頂点を意味するエイペックス(後述)とは異なり、走行ラインによって位置が変わるということです。
そのため、コーナーのどこをクリッピングポイントとするのか、という話になるわけです。
エイペックスとは?
あくまで走行ライン上で最もインに寄った位置を指すクリッピングポイントに対し、エイペックスとは、物理的なコーナーの頂点を指します。
一つのコーナーだけを見れば、このエイペックスをクリッピングポイントとしたアウトインアウトのラインが、最もRが大きくなる(スピードを落とさずに済む)ラインとなるわけです。
複合的でないシンプルなコーナーであれば、エイペックスはたった1つしかありません。
クリッピングポイントの位置でラインはどう変わる?
図1.クリッピングポイントとラインの関係
雑な絵ですみません(汗
丸い印がクリッピングポイントを表しています。
より直線的なライン取りを意識した際、クリッピングポイントを置く位置で走行ラインが大きく変化するということが見てお分かりいただけるでしょうか。
この違いについて順番に説明していきたいと思います。
クリッピングポイントをコーナーの頂点(エイペックス)に置いた場合
まずはクリッピングポイント=エイペックスのライン取りから。
図1の赤いラインがこれにあたります。
一般的にイメージされるアウトインアウトと言えばこの形。
3つのラインの中では最も“R”を大きくすることができるため、高いコーナリング速度が維持できるラインと言えます。
そのため単純なコーナリングスピードならこのラインが最速となります。
ただし正確に走らないとその恩恵が受けにくく、やってみると意外と奥が深いのがこのライン取りです。
どういうことかと言うと、例えば減速しすぎた場合はコーナリング中の平均速度が大きく下がってしまい、逆にオーバースピードで侵入した場合はコースオフの危険性が高まります。
減速量とステアリングを切るタイミングに正確さが求められる変わりに、高いスピードでコーナーをクリアできる・・・。
アウトインアウトの旨みを全て引き出すことを前提とすると、実は上級者向けのライン取りと言っても過言ではないのです。
クリッピングポイントをコーナー奥に置いた場合
図1の青いラインがこれにあたります。
このライン取りはクリッピングポイントを奥に置くことでコーナー後半の走りやすさと脱出速度を重視したライン取りと言えます。
赤いラインと比べると“R”が小さくなり、その分コーナリング中の平均速度が低くなる”可能性”があります。
しかしこのライン取りは加速重視でコーナーをクリアしたいときに効果を発揮し、この後に長い直線が待っているような、例えば各サーキットの最終コーナーなどではタイム的にもバトル的にも有利になりやすいと言えます。
コーナー前半でほとんど車の向きを変え終えることができるので、クリッピングポイントを通過する頃にはアクセル全開で加速しているはずです。
コーナー出口の脱出速度は後の直線区間におけるトップスピードに大きく影響しますので、ストレート手前のコーナーではこのようなライン取りをした方が有利な場合が多々あります。
また先ほど「コーナリング中の平均速度が低くなる」と言い切らなかったのは、加速重視のラインを取った方が速い車があるからです。
コーナリング性能はそこまで高くないが、加速性能が飛びぬけている車、例えば古いアメ車や大排気量のセダン車なんかを想像してもらうとイメージしやすいかもしれませんね。
これらの車は赤いラインで走行しようとしても結局大きくスピードを落とす必要があることが多く、それであればまずしっかりと向きを変え、そこから直線的に一気に加速した方が有利なことがあるのです。
また、コーナー後半の難易度が低いので、赤いラインと比べるとミスをした時のリカバリーが簡単というメリットもあります。
そういう意味では初心者にもおすすめできるライン取りとも言えますね。
また、複合コーナーを攻略する際はクリッピングポイントを奥に置いた走行を心掛けるだけで、比較的容易に速く走れるようになります。
クリッピングポイントをコーナー手前に置いた場合
図1の黄色いラインがこれにあたります。
青いライン同様、赤いラインより“R”が小さく、コーナリング中の平均速度は低くなりやすいでしょう。
強いて良い言い方をすれば、クリッピングポイントを手前に置くことでコーナー前半の走りやすさを重視したライン取り、と言えます。
しかしコーナー前半がいくら走りやすくても、後に難しい“R”の小さなカーブが残るのでは意味がありません。
このラインではクリッピングポイントを迎えた後もコーナーが続きます。
そのためコーナーを抜けるのに時間がかかる上になかなか加速することもできません。
またオーバースピードでコーナーに進入しやすくなり、コースオフの危険性が最も高いライン取りです。
コーナリングの基本テクニック、スローインファストアウトにも反し、車体のコントロールが難しいという欠点も持ちます。
コーナーの脱出速度が低い上に、コントロールも難しく、ダメなライン取りの例と言えるでしょう。
唯一、前走車のインに飛び込んでオーバーテイクを狙う際には、こういった”タイムを重視しないライン取り”を選択するケースもあります。
まとめ│クリッピングポイントは気持ち奥に置いた方が融通が利く。
今回は大きく3つのパターンに分けて考えてみました。
上記の通り、クリッピングポイントを手前に置くライン取りは安全性の観点からも避けた方が無難です。
ではクリッピングポイントをエイペックスとする場合と、クリッピングポイントをコーナー奥にする場合はどちらが良いのか。
これはこのコーナーの後にどのような道が待っているのか、またどんな特性の車に乗っているのかで変わってきます。
一般的にはエイペックスを通過した方が“R”が大きくなりスムーズに走ることができますが、慣れないうちはクリッピングポイントを気持ち奥に置いた方が、オーバースピードで曲がり切れなかったということもなく、安全に曲がることができるのでオススメです。
ぜひ安全な場所で実際に試して、その違いを体感してみてください。
コメント
わかりやすい説明をありがとうございます。
特にコーナーへの進入速度によってCPの位置も変わる。良い説明ですよね。
全ては安全と乗り心地良さのため。