ハンドル操作の基本とスポーツ走行におけるステアリングワーク!

ハンドル操作の基本とスポーツ走行におけるステアリングワーク! コーナリング

スポーツ走行時や緊急時は素早く正確なハンドル操作(ステアリング)が求められます。

もちろん、ハンドル操作を見直すことは普段の運転における安全性の向上にもつながります。

例えばカーブで思った以上に車が向きを変えてしまったり、カーブの出口で車体が不安定になったりといった症状に悩んだことはありませんか?

ここではそんな悩みを解決し、安全かつ乗り心地の良い運転を実現するための基礎知識をご紹介します。

 

ハンドル操作の基本

公道、サーキットを問わず、不意にハンドル操作を求められる場面は多々あります。

また、路面状況やタイヤのパンク、衝突や旋回中のブレーキによって挙動が乱れたときなどは、意図せずハンドルが取られることもありますよね。

どんな時でも正確な操作ができる状態を作り出しておくことは非常に重要です。

まずは基本の操作からおさらいしてみましょう。

 

ハンドルを握る手の位置

ハンドルを持つ位置(9時15分)

昔はハンドルは「10:10を持て」などと言われましたが、現在はパワーステアリング(機械的、電気的アシストによりハンドルを回す力が軽減される機構、いわゆるパワステ)が搭載されていることが一般的なため、9:15のあたりでも全く問題ありません。

プロドライバーの中にすら、ハンドルを持ち替えずに(ハンドルから一度も手を離さずに)できるだけ多くハンドルを押して回すために、あえて8:20の位置を好んで持つ人もいます。

ただし、9:15から上と9:15より下の位置ではハンドルを回す際に必要な力のかけ方が異なるので注意が必要です。

個人的には初動の速さを重視して9:15か、その少し上を持つことをおすすめします。

 

9:15の辺りを持つ場合、写真のようにハンドルのスポークに親指をかける人も多く、こうすることで手が滑るリスクを軽減することもできます。

ただし教習所などにおいては、未だに10:10にこだわる教官もいるかもしれませんから、そこは臨機応変に。

 

ハンドルの回し方-クロスハンドルとプッシュプルハンドル-

ハンドルの回し方には大きく分けて二つあります。

一つは教習所などで習う一般的な回し方「クロスハンドル」

もう一つは、いわゆる“送りハンドル”と呼ばれる「プッシュプルハンドル」です。

これらはどのように使い分ければ良いのでしょうか。

そしてどちらがより優秀な操作方法なのでしょうか。

 

クロスハンドルとは?-メリット・デメリット-

クロスハンドルとは、その名の通り手を交差させてハンドルを回す操作方法のこと。

例えば右に大きくハンドルを切る際、左手が右の端にくるところまで回したら、右手で左上のあたりをつかんで切り足す、といった具合。

一般的に教習所などで教わるのはこの操作方法のはずです。

ある程度ハンドルの決まった位置をつかむことになるため、今どのくらいハンドルを回しているかが直感的に判断しやすい持ち方です。

クロスハンドルは後述のプッシュプルハンドルと比べ、素早く大きな舵角を与えられるというメリットがあります。

一方でドライビングポジション(運転の姿勢)が悪いとハンドルを持ち替える際に手と手がぶつかってしまうなんてこともあるかもしれないので注意しましょう。

 

プッシュプルハンドルとは?-メリット・デメリット-

プッシュプルハンドルとは、いわゆる「送りハンドル」のことです。

プッシュプルハンドルにおいては左手がハンドルの左半分を、右手がハンドルの右半分を担当することになり、ハンドルが90度以上回る前に持ち替える必要があります。

この方法のメリットはどんなにハンドルを切っても動作が安定しやすい位置でハンドルを持てるということ。

タイヤの切れ角に関わらず手は10:10や9:15の位置をキープできるので、ドライバーの姿勢が安定しやすいのが特徴です。

 

デメリットはとにかく操作が忙しくなること。

ハンドルを一回転させようとしたとき、クロスハンドルであれば大きく1回持ち替えれば十分届きますが、プッシュプルハンドルでは最低でも2回は持ち替えなければいけません。

ハンドルを持ち替える間は残った片手でハンドルを回すことになります。

ですから、更に手の移動量を少なくするためにもっとこまめに持ち替えたとすると、ほとんど常に片手でハンドルを回すことになり、より多くの力を必要とします。

プッシュプルハンドルはちょっとした微調整には有用性がありますが、「頻繁な持ち替えはその分ミスを犯すリスク」とも言えますから、ハンドルを一気にたくさん回したいという場合は個人的には避けた方が良いと感じます。

特に交差点などでは犬かきのような仕草になりがちで、見た目的にもイマイチ。

 

また頻繁にハンドルを持ち替えるため、「今ハンドルをどれだけ回したか」がわかりずらくなってしまうという欠点もあり、このため世間一般では“ダメなハンドル操作の代表格”として扱われることも多いですね。

これを解消するために、ハンドルのてっぺんに目印、いわゆる“センターマーク”をつけている車両も存在します(後付けでドリフトなどの激しいハンドル操作の際に目印にする人も多い)

ただし、パワステが搭載されている車であればどれだけ回したかわからなくなっても手を離せば勝手にセンターに戻るので、低速域であればそこまで大きなデメリットにはならないかもしれません。

 

誤ったハンドル操作方法

管理人は、ハンドル操作において気をつけるべきは「いかに優れた操作をするか」ではなく、「いかに誤った操作をしないか」だと考えています。

ここでは代表的なNG例を3つほどご紹介します。

 

急ハンドルはNG

こんなことは改めて言われなくてもわかりますよね。

急ハンドルを切れば当然車も急な挙動を示し、その分乗り心地は悪くなりますし、最悪タイヤがスリップする恐れだってあります。

高速道路などを中心に、急ハンドルによってコントロールを失った車が重大事故を引き起こすケースも多く報道されていますよね。

トラックやバンなど、背の高い(重心の高い)車の場合は特に注意が必要です。

 

またスポーティーな味付けの車はハンドルの“遊び”が少ないため、慣れていない人が運転すると急ハンドルになりがちです。

しっかりと両手でハンドルを持ち、慎重な操作を心がけましょう。

できるだけじわっと荷重がかかるようなステアリングワークを意識したいですね。

 

内かけハンドルはNG

内かけハンドルとは内側からハンドルを握る操作方法のこと。

より小さな力でハンドルを回せるため、ダメとわかっていてもついやってしまうという人も多いのではないでしょうか。

内かけハンドルのダメな理由はただ一つ、それはハンドルと手が干渉しやすいからです。

ハンドルは中心からいくつかのスポーク(のようなもの)が伸びて、手で持つ輪っか部分を支えていますよね。

ハンドルの内側に手をかけて回していくと、単純にこのスポークを邪魔に感じるはずです。

これは、操作中に手とスポークが干渉するリスクがあることを示唆しています。

内かけハンドルが癖になっていると、「とっさにハンドルを握ろうとしたけどスポークのせいでハンドルが持てなかった」ということも起こりかねません。

日常のドライビングにおいてはさほど大きな問題は生じないかもしれませんが、いざというときや咄嗟の操作性を考えると、普段からやらないように徹底しておいた方が無難です。

 

ただし、トラックやバスなどの大型のハンドルを操作するシーンにおいては、内かけハンドルのデメリットがナリを潜め、有効に活用することが可能です。

 

片手ハンドルはNG

片手ハンドルには頻繁なシフト操作が必要なシーンでは習熟しておくと強味になるケースもあり得ます。

しかし、実際にメリットとして現れるようなシーン・ケースはラリーにでも参加しない限りお目にかかることはないでしょう。

一般人がサーキットを走ったり、ましてや公道を走る限りは“必要”性は皆無と言っても過言ではないと考えます。

逆に、片手ハンドルをすることによって“操作ミス”という大きなリスクが付きまとうことになります。

これではまさにハイリスクローリターン

可能な限り正確かつ精密な操作をするために、ハンドルは極力両手で操作することを心掛けたいですね。

 

スポーツ走行におけるステアリングワーク

スポーツ走行においてステアリングワーク(ハンドル操作)に求められるのは次の3つ。

  1. 操作をミスしないこと
  2. 素早く操作すること
  3. 繊細な操作をすること

 

そもそもスポーツ走行においては、「極力ハンドルを持ち替えない」という大前提があります。

とはいえそうもいかないケースもあるわけで、ここでは持ち替えが必要な超低速コーナーなどを想像していただけると幸いです。

 

結論から言うと、基本的にはクロスハンドルだけで問題ないと思います。

ただし、中にはプッシュプルのような動作をした方が楽なコーナーもあります。

具体的にはコーナーに進入する直前にハンドルを持ち替えるのですが。

普段は9:15分に構え、コーナーが迫った時に曲がる方向と反対側(アウト側)の手を少し下に動かす。

右コーナーであれば7:15、左コーナーであれば9:25のあたりまで片手を下げるわけです。

あるいは、イン側の手をハンドル頂点に持ってくるのも良いですね。

教科書通りの操作方法ではないかもしれませんが、例えばレーシングカートのようにハンドルが重く、長時間の走行で腕が疲れてしまうようなケースでは検討する価値があります。

 

当然、あおりハンドルは絶対にNGです(理由はこちら↓)

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なお、スポーツ走行においては、コーナー後半で極力早めにハンドルをまっすぐに戻すように心がけると、タイムアップが見込めるかもしれません。

余談ですが、レーシングカーなどはもともと市販車よりも少ないハンドル操作で大きな舵角が得られるようにセッティングされていますから、やはりハンドルを持ち替えるという場面はほとんどありません。

その分ドライバーにはより繊細な操作が求められるというわけですね。

 

どのくらい切る?大切なのは”目線”

スポーツ走行におけるハンドル操作においては、「どのように操作をするか」よりも「どの程度操作するか」の方が圧倒的に重要です。

要は、結果的にハンドルを必要な量だけ安全かつ正確に回すことができれば、持ち方や操作方法なんてどうでもいいんです。

 

では実際にどの程度ハンドルを回せば良いのでしょうか。

これはコーナーによって異なるため、本人が納得できるまで練習するしかありませんが、短期間で素早く身に付けるために重要なポイントがあります。

それがドライバーの目線です。

これは車やバイクの運転のみならず、例えばスノーボードでトリックを決める際などにおいても同じことが言えます。

人間の体には無意識のうちに目で見た方向に動きを補正する機能が備わっています。

車両のすぐ近くに目線を落とすより、コーナーの奥へ奥へ目線を送ると、自然とスムーズかつ適切なライン取りで走れるようになります。

特にスポーツ走行初心者の方は是非試してみてください。

 

あとは適切なラインをイメージすることと、クリッピングポイントをしっかりと意識すること。

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おまけ ハンドルの大きさによる違い

実はハンドル(ステアリングホイール)の大きさによって車の操作性は大きく変わります。

例えばごく一般的な常用車と比べ、スポーツカーのハンドルは小さく、逆にトラックやバスのような大柄な車ほどハンドルが大きくなる傾向にあります。

ハンドルの大きさは“ハンドルを回す際に必要な力”と“手を動かす量”に影響します。

【回す際に必要な力】【手を動かす量】【得意な操作】
ハンドルが大きい(大径)小さい多い繊細な操作
ハンドルが小さい(小径)大きい少ない素早い操作

 

ハンドルが大きい方が手を大きく動かさなければなりません(円周が大きくなるため)

代わりに小さい力で回すことが可能で、かつ手の動作に対してゆったりとハンドルが回るため、より繊細な操作が可能とも言えます。

逆にハンドルが小さいと大きな力が必要となり、繊細な操作も難しくなりますが、代わりに素早く動かすことができるというメリットがあります。

 

もちろん、市販車の多くはパワステを搭載しているため、ハンドルを回す際に必要な力の大小はあまり気にする必要はありません(スポーツカーのハンドルが重いのは径が小さいからではなく、フィードバックを感じやすくするため)

また最近の車は電子制御によって「ハンドルを回した量=タイヤの切れ角」とは限らず、またハンドルを回した際の“遊び”もそれぞれです。

そのため、実際はハンドルの大小で最も大きく変わるのは“手を動かす量”ということになります。

操作性を求めてステアリングホイールを交換する人もいるかもしれませんが、ハンドルが大きいほど繊細な操作が、ハンドルが小さいほど素早い操作が可能と覚えておきましょう。

 

あとがき

ハンドル操作は自動車を運転する上では基本中の基本ですが、実は追求していくと奥が深い部分でもあります。

特にスポーツ走行をする際はハンドル操作(ステアリング)の良し悪しは速さに直結します。

もしコーナーで必要以上に緊張してしまったり、車の挙動が不安定になるように感じることがあれば、是非ステアリングワークを見直してみてください。

基本こそ、見直すと新たな発見があるかもしれませんよ♪

  1. 匿名 より:

    手をシフトノブに置き続けてもクラッチが摩耗することはないですね。
    摩耗するのはトランスミッションの中のシフトフォークかな

    • 管理人 より:

      大変申し訳ありませんでした。
      数年前の記事ですが、なぜクラッチなどと書いていたのか自分でもナゾです・・・。
      該当箇所はもともと蛇足部分だったこともあり、リライトついでに丸々削除いたしました。
      ご指摘ありがとうございました。